研究課題/領域番号 |
20K07549
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
久世 望 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 特任講師 (80710409)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HIV-1 / CTL / 変異 / STING / ナイーブ / メモリー / cART |
研究実績の概要 |
本研究では、長期cART治療中のHIV-1感染者から国内に流行している変異HIV-1を排除できるCTLの誘導を可能にする技術の確立を目的としている。これまで我々の研究グループが明らかにした生体内でHIV-1を強く抑制できるCTLを誘導できる20種類のHIV-1エピトープとSTING活性化によるCTLの誘導法を組み合わせることによって、完治療法やワクチンへの応用が期待できる。しかし、HIV-1感染者は様々な変異HIV-1に感染している。前年度までの研究で、STING活性化によりCTLの誘導を行う必要がある国内流行HIV-1変異を選択できた。そこで本年度は実際にナイーブT細胞から日本人に蓄積している変異を認識できるCTLが誘導可能かどうか検討を行った。特に日本人が高頻度に持ち最もプロテクティブな機能を持っているHLA-B5201のエピトープについて解析を行った。その結果、HIV-1感染者では見られなかった蓄積変異を認識できるTCRを持ったエピトープ特異的CTLが、STING活性化によりナイーブT細胞から野生型ペプチドを用いて誘導できることが分かった。またこれらの細胞は変異エピトープに対してサイトカインの産生能を示し、機能を持っていることを示した。これらの結果から、感染者(エフェクター細胞)では確認できなかった変異抗原を認識できるTCRを持った新規CTLがナイーブT細胞からは誘導でき、流行HIV-1に対応できるCTL応答を誘導可能であることを示した。また長期治療患者108名の血液からPBMCを収集し、HIV-1非染者だけでなく実際に治療HIV-1感染者のナイーブT細胞、メモリーT細胞から流行変異を認識できるCTLの誘導を試みる準備ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
完治療法に応用が期待されるHIV-1を強く抑制できるCTLを誘導できる20種類のHIV-1エピトープのうち、日本人が高頻度に持ち、最もプロテクティブな機能を果たしているHLA-B*5201に拘束されるエピトープGag275-282はエピトープの6番目に変異(6A, 6V, 6S)が蓄積している。このうち6Sは日本人(HLA-B*5201+)に26%程度蓄積し、HIV-1感染者ではこの変異を認識できるCTLは検出できていない。一方で非感染者のナイーブT細胞からはSTING活性化により6S変異を認識可能なCTLを野生型ペプチドを用いて誘導できることが分かった。このことからエフェクター細胞では誘導が困難な変異を認識できるCTLがTCRレパートリーが多様性に富んでいるナイーブT細胞からだと誘導可能であるということを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は実際にHIV-1非感染者で誘導できたような変異を認識できるCTLが、ウイルス量が2年以上検出できない長期治療HIV-1感染者のナイーブT細胞およびメモリーT細胞から誘導可能か検討を行う。メモリーT細胞についてはELISPOT解析によりどのエピトープ特異的T細胞が長期治療の間でも残存しているのか解析を行い、誘導対象にするエピトープを選択する。また各細胞サブセット(ナイーブ、メモリー、エフェクター)から誘導できたCTLの機能を変異に対するサイトカイン産生能、細胞傷害活性能、HIV-1増殖抑制能を評価して解析を行う予定である。
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