研究課題/領域番号 |
20K07550
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
原 博満 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (20392079)
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研究分担者 |
久住 聡 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (00758039)
柴田 昌宏 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10343253)
阿戸 学 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 部長 (20392318)
宮本 友司 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 主任研究官 (40392328)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗酸菌 / らい菌 / ハンセン病 / 自然免疫 / マクロファージ / 免疫回避 / 結核 |
研究実績の概要 |
抗病原性結核菌北京株H878の培養条件およびPGLの検出方法を検討する事で、同菌がPGL-tbを産生していることをようやく確認できるに至った。この培養菌を用いてマウス(C57BL/6)へのエアロゾル肺感染試験を共同研究者である国立感染症研究所の阿戸らに依頼した。その結果、マウスの結核菌試験で汎用されている実験室株H37Rv、Erdman株で実施しているのと同じ菌数(500 cfu/mouse)では、肺に十分に菌が定着しないことが判明した。論文報告的には、H878の方が実験室株より遥かに病原性が高いと言われており、この低病原性が何に起因したものかは不明であるが、再度種株からの培養をやり直す、マウスに十分に訓化された菌を再入手する、感染菌数を増やすなどして、菌の定着条件を見出す必要があると考えられた。 一方、らい菌のマウス神経内感染による脱髄誘導試験に関しては、らい菌の死菌体の坐骨神経内注入でも炎症細胞の浸潤や脱髄が観察されることがわかり、炎症による脱髄誘導の可能性が示唆された。一方、過去文献を参考にしたらい菌生菌の神経内注入試験では、炎症による組織損傷の度合いがあまりにも著しく、実際のハンセン病の病態に近似した脱髄状態の病理像を得るためには、注入菌数のdoseをうまくコントロールする必要性があると考えられた。また、生成PGL-1の注入のみでは明確な炎症細胞の浸潤や脱髄症状を観察できるに至らなかったため、何らかの別の菌体成分を同時注入する必要性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、結核菌北京株のマウス感染試験を実施するために感染動物施設を利用させていただく予定であった国立感染症研究所ハンセン病研究センターへ の出張が大学の方針で禁止された状態が継続しているため。また、譲渡された北京株の病原性が低下している事が予備試験の段階で判明し、期待されたような動物実験が実施できなかったため、その改善のために時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
国内移動がある程度許容される状況になったため、国立感染症研究所での施設利用講習会を終了し、感染試験を実施できる状態を整える。これとは別に、北京株H878の低病原性問題を解決するため、共同研究者の阿戸らのグループに株のマウスへの訓化を試みていただくと共に、マウスに高病原性を示す同株を用いて感染試験を実施している海外研究グループからその株を再入手できるかの交渉を実施する。場合によっては、PGLR欠損マウスをその海外研究期間に送付して、同機関での感染試験が依頼できるかどうかの交渉を行う。 らい菌感染試験に関しては、坐骨神経感染の再現性を確認すると共に、菌の神経内感染がどの程度長期間持続可能であるかを検証し、そ病態の経時的変化を解析する。そのデータをもとに、PGLR欠損マウスを用いた感染試験を実施し、PGLR欠損の脱髄や病態における役割の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの流行に関連して、研究分担者である阿戸らの研究施設において施設利用研修を受講したり、感染試験を実施するために使用する予定であった旅費を使用しなかったため。
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