研究課題/領域番号 |
20K07551
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
飯笹 英一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (20631998)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Card9 / ITAM / IL-5 / GM-CSF / βcサイトカイン / Syk / FcRγ / Dap12 |
研究実績の概要 |
ITAM-Card9経路がよく研究されている骨髄系細胞のパターン認識受容体(PRR)下流では、各PRRと会合するTAM会合分子のリン酸化モチーフであるITAMがPRRのリガンド認識によりリン酸化され、そこにキナーゼであるSykがリクルートされ、活性化し、下流のアダプター分子Card9を介してNF-κBやMAPKを活性化することで、炎症サイトカイン産生など様ざまな免疫応答を誘導することが示されている。 本年度は、上記の知見を踏まえ、GM-CSF受容体下流のITAM-Card9経路の活性化をまず生化学的手法を用いて検証した。GM-CSFによるマクロファージの分化不全が見られていた分子FcRγ KOでは、GM-CSFによるSykのリン酸化が低下することがわかった。一方でマクロファージの分化不全が見られなかった別のITAM分子Dap12 KOでは、WTと同等のリン酸化が見られた。また興味深いことに、Sykのリン酸化度合いによってマクロファージの分化が制御されている可能性があり、Sykのリン酸化が強くなるとマクロファージの分化が促進され、逆に、Sykのリン酸化が弱いと樹状細胞への分化が促進することを示唆する結果も得た。 一方で、MAPKのリン酸化とNF-κBの核移行を検証すると、FcRγ KOでは、MAPKの1種であるJNKのリン酸化が低下することもわかった。さらにNF-kBの核移行を調べると、FcRγ KOとFcRγ KOでその核移行の低下が見られた。これらのことから、GM-CSF受容体シグナル伝達経路においてもPRRと同様のITAM-Card9経路が活性化していることがわかった。しかし、ITAM分子を介したPRRをこれまで検証してきたレポーター細胞の系で、GM-CSFRを発現させてもレポーターの活性化が見られないことからPRRとは異なるシグナル活性化が存在する可能性もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の通り、当初予定していたGM-CSF受容体のシグナル伝達経路の生化学的な解析は概ね順調に進んだ。しかし、一方で、WTとCard9 KOをGM-CSFで刺激した際のトランスクリプトーム解析をRNA-seqで行うことを予定していたが、骨髄細胞からGM-CSFでマクロファージや樹状細胞を誘導する際、どの分化段階で比較するのが最適かその条件検討を行うのに時間がかかってしまったため、トランスクリプトーム解析はまだ行えていない。そのため研究の進捗は計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,GM-CSFによる骨髄細胞の分化において、FcRγ-Card9経路は、なぜマクロファージの分化を特異的に促進するのか、その分子基盤を明らかにするため、既知のCard9経路の下流のNF-kBやMAPKの阻害剤を用いてそれらの関与を検証しつつ、マクロファージ分化においては、トランスクリプトーム解析によりターゲットとなる分子あるいは、シグナル伝達経路を明らかにする。 また、GM-CSFが密に関連する疾患多発性硬化症のマウスモデルEAEをFcRγ KOやCard9 KOで誘導し、in vivoにおけるこのシグナル伝達系の機能あるいは重要性を明らかにする。さらに、他のβcサイトカインIL-5についてもまずはin vitroでGM-CSFと同様の解析を行う。
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