研究課題
βcサイトカインは、GM-CSF、IL-3、IL-5など、それらの受容体複合体にβcが含まれるサイトカインの総称である。昨年度は、骨髄由来樹状細胞(BMDC)でGM-CSF受容体のシグナル伝達にITAM共役分子のFcRγとアダプター分子Card9が寄与していることを明らかにした。そこで、本年度は、IL-3とIL-5受容体のシグナル伝達におけるこれらの分子の寄与を検証した。IL-3、IL-5は、それぞれ、骨髄由来好塩基球(BMBaso)と骨髄由来好酸球(BMEo)の増殖、分化、活性化に重要であるため、これらの細胞をモデルにして上記の検証を行った。ITAM共役分子のFcRγ、DAP12、および、Card9 欠損(KO)マウスから骨髄を採取し、IL-3、IL-5を添加培養し、BMBaso、BMEoを誘導した。BMBasoの細胞数は、DAP12 KO骨髄で低下したが、BMEoの細胞数は、これらのKOで変化しなかった。このことから、DAP12がBMBasoの分化に重要であることがわかった。一方で、BMBasoをIL-3で刺激するとFcRγを介してIL-4の産生が見られることが知られているが(Hida et al., Nat. Immunol., 2009)、上記のKO BM BasoをIL-3で刺激すると、FcRγ KOでのみ、IL-4産生が低下し、DAP12 KO、Card9 KOでは変化が見られなかった。また樹状細胞、好塩基球、好酸球におけるITAM分子、Card9の発現をImmugenで調べたところ、FcRγ、Dap12は、これらの全ての細胞で高く発現していたが、Card9は、樹状細胞でのみ発現が高かった。このことから、Card9は、発現が高いBMDCでのみβcサイトカインのシグナル伝達に寄与していることが明らかになった。
3: やや遅れている
FcRγやCard9がGM-CSF受容体のシグナル伝達にどのように寄与するか明らかにするため、それぞれのKO由来骨髄細胞をGM-CSFで刺激した際のトランスクリプトームをWTのものと比較する予定であったが、骨髄細胞がヘテロな集団であるため、正確に検証するためには、骨髄細胞中の単一な細胞集団で行う方が適切であると判断したため、まだ行えていない。
骨髄細胞中のGranulocyte-monocyte portenitor (GMP)やMonocyte-dendiritic cell progenitor (MDP)など前駆細胞の単一な集団を精製した後、GM-CSFで刺激し、RNAを抽出して、トランスクリプトーム解析を行う。また、in vivoでのGM-CSF受容体シグナル伝達におけるFcRγ、Card9の寄与を検証するため、GM-CSFが病態に密接に関連している多発性硬化症モデルマウス(EAEマウス)をFcRγ KO、Card9 KOマウスで作製し、解析する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Nature communications
巻: 12 ページ: 2299-2299
10.1038/s41467-021-22620-3