本年度は、GM-CSF受容体シグナル伝達におけるFcRγやCard9の寄与をin vivoで解析した。GM-CSFは、多発性硬化症の病態に重要な役割を果たしていることが知られている。そこで、そのモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を各分子のKOマウスで誘導し、その病態を比較、解析した。 Card9 KOでは、これまでの実験と同様にEAEの病態スコア、発症率共に有意に低下した。また、FcRγ KOでもEAEの病態スコア、発症率共に有意に低下した。FcRγは、MincleなどのC型レクチン様パターン認識受容体(CLR)と会合し、Card9を介して免疫応答を誘導することが知らている。MincleなどのCLRは、結核菌の認識、免疫応答にも不可欠な働きをしているため、EAEを誘導する際のアジュバントとして使用される結核死菌をCLRが受容して、その免疫応答シグナルによって、EAEの発症に関与している可能性も考えられる。 そこで、EAE発症におけるCLRシグナルとGM-CSF受容体シグナルへのFcRγ、Card9の寄与を検証するため、ゲノム編集技術によってCLRファミリーを含む遺伝子座を欠損した⊿Clec4マウスでEAEを誘導した。その結果、⊿Clec4マウスでは、WTと同程度の病態スコア、発症率を示した。このことから、Card9 KOやFcRγ KOで見られたEAEの改善は、CLRシグナルではなく、GM-CSF受容体シグナルにおいて不可欠な役割をしていることが示唆された。以上のことから、In vioでもFcRγやCard9は、GM-CSF受容体シグナルに不可欠であることが示された。
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