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2020 年度 実施状況報告書

ケミカルバイオロジーを利用した濾胞制御性T細胞分化機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K07552
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

高橋 大輔  慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (40612130)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード濾胞制御性T細胞 / ケミカルバイオロジー / イメーサイトメトリー / 自己免疫疾患 / TFR細胞分化誘導系
研究実績の概要

濾胞制御性T細胞 (follicular regulatory T cells: TFR細胞)は、自己抗原を認識するIgG抗体 (自己抗体)やアレルギー応答に関与するIgE抗体の産生を抑制することで、自己免疫疾患やアレルギー疾患の発症抑制に必須の役割を果たす。しかし、その分化機序については不明な点が多い。本研究では、in vitroのTFR細胞分化誘導系と、既知活性化合物やoff patent医薬品ライブラリーを組み合わせ、ケミカルバイオロジーの手法を用いることで、TFR細胞の分化に関わる分子を網羅的に同定する事を目的としている。さらに、TFR細胞を標的とした自己免疫疾患やアレルギー疾患の新規治療薬候補の検証を行う。
2020年度は、in vitroのTFR細胞分化誘導系を用いて、既知活性化合物やoff patent医薬品ライブラリーのTFR細胞分化誘導能をイメージサイトメトリーの手法でスクリーニングした。具体的には、Foxp3-EGFPとBcl-6-tdTomatoのダブルレポーターマウスの脾臓からナイーブT細胞を単離し、96ウェルプレート上でTFR細胞分化誘導条件下にて培養する際に化合物を添加した。また、ウェル上で生細胞を同定するのに必要な蛍光色素で染色を行った。培養後に、TFR細胞分化の指標としてEGFPのシグナルとtdTomatoのシグナルを計測し、生細胞中のFoxp3とBcl-6を発現する細胞数やその発現強度を評価した。1次スクリニーングとして、計800種類の化合物を評価し、その中でFoxp3とBcl-6の発現細胞数や発現強度を増強・減弱させる化合物を50種類以上同定した。またスクリーニングに使用するTFR細胞分化誘導系を樹立した事を、論文として報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究課題は、申請書の研究計画に沿って、大きな問題を生じる事なく進捗していると考えている。2020年度の計画は、既知活性化合物やoff patent医薬品ライブラリーが、TFR細胞分化誘導する能力を評価する1次スクリーニングを終了する事を目標としていた。しかしながら、遺伝子改変マウスから単離した初代細胞を用いるスクリーニング系であることから、スクリーニングの進捗がマウスの生産計画に大きく依存している。2020年度前半のコロナ禍の影響でマウスのコロニーを一時的に大幅に縮小した結果、繁殖計画に遅延が生じ、必要数のマウスを揃える事が出来なかった。この影響で、1次スクリーニングの進捗率は概ね80%であり、計画に若干の遅れが生じている。しかしながら、2021年度の第一四半期にはこの遅れを取り戻せる予定である。

今後の研究の推進方策

計画に若干の遅延が生じている事から、2021年度の第一四半期までに前年度の遅れを取り戻し、TFR細胞分化誘導能の1次スクリーニングを終了する。従って、第二四半期からの残期間で当初の2021年度の計画を実施することを目指す。2021年度の計画は、1次スクリーニングで選抜した化合物について、2次スクリーニングとしてイメーサイトメトリーによって、TFR細胞分化の別の指標であるTCF-1とCXCR5の発現を評価する。2次スクリーニングでは、TCF-1-EGFPレポーターマウスを使用する。TFR細胞培養後に、BV421標識抗CXCR5抗体で染色し、生細胞中のEGFPとBV421のシグナルを指標としてTCF-1とCXCR5のシグナルを計測し、生細胞中の発現細胞数やその発現強度を評価する。その中でTCF-1とCXCR5の発現細胞数や発現強度を増強・減弱させる化合物を同定する。
2次スクリーニング後は、3次スクリーニングとして、2次までに評価したFoxp3、Bcl-6、TCF-1、CXCR5に加えて、他のTFR細胞に特徴的な分子の発現に対して化合物が与える影響をフローサイトメトリーにて評価する。また、ヒトのTFR細胞培養系を用いても同様の評価を行う。
その後、既知活性化合物やoff patent医薬品で構成される化合物ライブラリーを使用する利点を生かし、TFR細胞の分化や機能に関わる分子の役割を検証する。多数の候補分子が同定されると期待される事から、全てを対象とするのは困難である為、本研究計画では特に転写因子に着目する。CRISPR/Cas9システムで遺伝子発現を欠損させる、もしくは強制発現させ、TFR細胞の分化に与える影響を解析する。
研究計画の最終年度には、スクリーニングを経て同定するTFR細胞の分化誘導を促進する化合物を用いて、自己免疫疾患とアレルギー疾患への治療効果を検証する。

次年度使用額が生じた理由

2020年度は、化合物のスクリーニングのみを実施した。化合物は他研究機関等より無償で供与されたものである。また、実験に使用したマウスの飼育費用や、イメージサイトメトリーに使用した試薬類は少額であった為、所属研究機関より受領した研究費を利用することで賄った。また、コロナ禍の影響によりマウスの繁殖計画が遅れた事から、計画の80%程度しか進める事が出来なかった。上記の事情に加えて、2021年度以降に多額の資金を要する実験計画があることから、2020年度の資金を繰越して利用する事とした。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)

  • [雑誌論文] Symbiotic polyamine metabolism regulates epithelial proliferation and macrophage differentiation in the colon.2021

    • 著者名/発表者名
      Atsuo Nakamura, Shin Kurihara, Daisuke Takahashi, Wakana Ohashi, Yutaka Nakamura, Shunsuke Kimura, Masayoshi Onuki, Aiko Kume, Yukiko Sasazawa, Yukihiro Furusawa, Yuuki Obata, Shinji Fukuda, Shinji Saiki, Mitsuharu Matsumoto, Koji Hase
    • 雑誌名

      Nat Commun

      巻: 12 ページ: Article 2105

    • DOI

      10.1038/s41467-021-22212-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Epithelial HVEM promotes basement membrane synthesis and intraepithelial T cell survival and migration2020

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Takahashi*, Qingyang Wang*, Goo-Young Seo* (*equal contribution), Jr-wen Shui, Zbigniew Mikulski, Paola Marcovecchio, Masumi Takahashi, Charles D. Surh, Hilde Cheroutre, Mitchell Kronenberg
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2020.09.30.317628

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Polyamines polarized Th2/Th9 cell-fate decision by regulating GATA3 expression2020

    • 著者名/発表者名
      Atsuo Nakamura, Daisuke Takahashi*, Yutaka Nakamura, Takahiro Yamada, Mitsuharu Matsumoto* (*equal correspondence), Koji Hase
    • 雑誌名

      Arch Biochem Biophys

      巻: 693 ページ: 108587

    • DOI

      10.1016/j.abb.2020.108587

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Microbiota-derived butyrate limits the autoimmune response by promoting the differentiation of follicular regulatory T cells2020

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Takahashi, Naomi Hoshina, Yuma Kabumoto, Yuichi Maeda, Akari Suzuki, Hiyori Tanabe, Junya Isobe, Takahiro Yamada, Kisara Muroi, Yuto Yanagisawa, Atsuo Nakamura, ... Koji Hase
    • 雑誌名

      EBioMedicine

      巻: 58 ページ: 102913

    • DOI

      10.1016/j.ebiom.2020.102913

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2021-12-27  

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