研究課題/領域番号 |
20K07554
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
植田 祥啓 関西医科大学, 医学部, 講師 (90533208)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | NKT細胞 / 胸腺 / インテグリン / Rap1 |
研究実績の概要 |
Rap1はインテグリンの活性化、および細胞極性に重要な役割を果たしている。invariant NKT (iNKT) は多様性のないT細胞受容体を持ち、糖脂質を抗原として認識してIL-4, IFN-γを分泌する。iNKT細胞の産生におけるRap1の役割を検討するためにRap1欠損マウスの胸腺に存在するiNKT細胞をNK1.1およびα-ガラクトシセラミドのアナログを導入したCD1dテトラマーにより測定したところ、iNKT細胞の割合が半分に低下することが明らかとなった。また、Rap1欠損マウスのiNKT細胞は野生型に比べてT細胞受容体(TCR)の表面発現およびCD1d テトラマーの結合強度が上昇していた。このことはRap1によりiNKT細胞の分化やレパトアが調節されている可能性を示唆すると考えられる。 Rap1はTalin1を活性化し接着分子インテグリンのβ鎖への結合を促進させることでインテグリンを活性化し、細胞間接着やシグナルを誘導する。Rap1欠損によるiNKT細胞の変化においてインテグリンシグナルに関与するかどうかを検討するために、Talin1欠損マウスにおけるiNKT細胞の割合を検討したところ、変化しなかったことからRap1によるiNKT細胞の産生低下はインテグリンシグナル以外の経路が関与する可能性が考えられる。一方、Talin1欠損マウス由来のiNKT細胞は、Rap1欠損マウス由来のiNKT細胞と同様に、TCRの表面発現およびCD1dテトラマーの結合強度が上昇していたことから、これらの変化にはインテグリンシグナル調節が重要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD1dテトラマーを用いた検出によりRap1欠損マウスにおいてはiNKT細胞の割合が低下し、TCRの発現上昇が観察された。このことはRap1によりiNKT細胞の分化やレパトアが調節されている可能性を示唆する結果が得られた。またRap1下流のエフェクターでインテグリンの活性化に必須のTalin1の欠損マウスとの比較により、iNKT細胞の産生におけるRap1の役割及びそのインテグリン活性化調節の役割を切り分けられる可能性を明らかにすることができたため、おおむね順調である。現在、Vbeta抗体を用いた染色等により、Rap1とTalin1によるiNKT細胞のレパトア調節を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
1.Vbeta抗体を用いた染色や次世代シークエンスを用いたT細胞受容体遺伝子解析により、Rap1とTalin1欠損マウスによるiNKT細胞のレパトア調節を検討する。 2.NKT細胞のサブセットを測定することにより、Rap1シグナルによるNKT細胞の分化の影響を詳細に解析する。 3.Rap1シグナルによるNKT産生の制御ポイントを明らかにするために正常型およびRap1シグナル改変胸腺DP細胞を導入したex vivo胸腺組織培養を用いたNKT細胞分化誘導系を確立し、経時的にNKT細胞の分化の過程を追跡する。NKT細胞分化に必須な転写因子PLZF等の発現の変動測定し、Rap1に制御されるNKT細胞シグナルを明らかにする。 4.可視化した胸腺細胞を胸腺スライスのNKT細胞分化誘導系に導入し、2光子励起レーザー顕微鏡を用いたライブイメージングによって、Rap1シグナル改変マウス由来DP細胞からNKT細胞の移動・接着動態(移動速度・抗原の遭遇頻度、抗原特異的相互作用の持続時間、一細胞当たりの活性化の強度)を測定し、正常型細胞の動態と比較する。以上の解析から接着動態とTCRシグナル強度およびNKT細胞の分化の関係をモデル化する。
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