研究実績の概要 |
これまでの研究により、Rap1欠損マウスにおいてはiNKT細胞数が低下し、またT細胞受容体(TCR)の表面発現およびCD1d テトラマーの結合強度が上昇していた。一方Talin1においてはRap1と同様にT細胞受容体(TCR)の表面発現およびCD1d テトラマーの結合強度が上昇していた。このことはRap1やTalin1によりiNKT細胞の分化やレパトアが調節されている可能性を示唆すると考えられる。そこでVbeta抗体を用いた染色により、Rap1とTalin1欠損マウス由来のiNKT細胞のレパトアをフローサイトメトリーにより測定したところ、Talin1KO由来のNKT細胞においてTCRのVbeta7を発現するT細胞の割合が有意に上昇していたものの、Rap1とtalin1の欠損により大きな変動は観察されなかった。また、次世代シークエンスを用いたT細胞受容体遺伝子解析によるTCRレパトアの解析を行ったところ、多様性指数やCDR3の配列、長さに大きな違いが観察されなかった。したがってNKTのような極めて限定されたTCRを持つT細胞の選択や増殖においてはTCRのレパトア調節よりもTCR発現レベルでの調節が行われている可能性が考えられる。次にRap1やTalin1欠損がiNKTの分化に与える影響を検討した。iNKTは胸腺内でIFNg, IL-4、IL-17をそれぞれ分泌するiNKT1,2,17に分化・増殖する。そこで細胞内染色法により、これらのサイトカインを測定したところ、大きな差異は見られなかった。したがって胸腺のNKTの後期発生過程に影響を与える可能性は小さいと考えられる。以上のことからRap1欠損によるiNKT細胞の低下は前期発生過程による増殖や生存に影響がある可能性がある。
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