研究課題/領域番号 |
20K07555
|
研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
松田 達志 関西医科大学, 医学部, 准教授 (00286444)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | T細胞 / 免疫制御 / 自己免疫疾患 / 細胞内シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
ADP-ribosylation factor (Arf)は、細胞の恒常性維持に必須な小胞輸送を制御する低分子量Gタンパク質である。Arf阻害剤であるBrefeldin Aはin vitroでT細胞からのサイトカイン分泌阻害に用いられるが、個体レベルの免疫応答においてArf経路が果たす役割は不明であった。そこで本研究では、免疫細胞特異的Arf欠損マウスを活用して、Arfファミリーの個体レベルにおける生理機能解明に取り組んだ。本年度は、特にT細胞系列におけるArf経路に焦点を当てて解析を進め、Arf欠損ナイーブT細胞において活性化過程でアポトーシスの亢進が見られること、ならびにその背景にBcl2ファミリー分子であるBimとMcl-1の発現バランスの異常が存在することを見出した。興味深いことに、このアポトーシスの亢進はIL-21などリンパ節で高産生されるサイトカインを共存させることでキャンセルされ、リンパ節におけるヘルパー機能が保持される一方、炎症部位におけるT細胞増殖・生存に異常が生じる可能性が強く示唆された。実際、Th1依存性の感染応答が惹起されるリーシュマニア感染の系で、炎症部位におけるリーシュマニアの排除に障害が確認された一方、リーシュマニアに対する特異的抗体産生能は保持されていた。現在、並行してTh2依存性のHp感染応答、ならびにCTLを介した腫瘍免疫の系でArfの重要性を検証中である。一方、B細胞系譜における解析については、in vitro分化系を用いた解析から、Arf欠損に伴いGC-B細胞から形質細胞へと分化・成熟する過程に異常が確認されつつあり、詳細を解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T細胞においてArf経路が生存維持を司ることを見出すと共に、計画していた感染応答への影響についても順調に成果が得られつつある。また、B細胞におけるArf経路の機能に関しても、予定していた解析に着手しており、予備的な成果が得られつつある。また、T細胞・B細胞における制御因子の解析については、安定発現株の樹立に着手しており、予定していた解析系の立ち上げが進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の解析から、T細胞ならびにB細胞におけるArf経路の生理機能の一端が明らかとなった。今後は、研究計画に基づき、より詳細な分子メカニズム解明に向けての解析に注力すると共に、臨床的な応用可能性に繋げる意味で、感染応答や自己免疫病態に及ぼす影響の有無について検証を進める予定である。また、B細胞系譜の研究用に開発していたArf1-fl/fl x CreERT2マウスの解析の過程で、マスト細胞の分化過程にArf1が関与する可能性が示唆されつつある(未発表)。当初予定から研究計画を拡大して、マスト細胞におけるArf経路の役割についても、検討を進めていきたい。
|