研究課題/領域番号 |
20K07556
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
高村 史記 近畿大学, 医学部, 講師 (90528564)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メモリーCD8T細胞 / 滞在型メモリー / インフルエンザウイルス / 肺粘膜 / 感染防御 |
研究実績の概要 |
肺粘膜に定着する滞在型メモリーCD8 T細胞(CD8 TRM)は様々な株のインフルエンザウイルスに対して交差感染防御効果を示す。研究代表者は先行研究にて肺におけるCD8 TRM分化・蓄積部位が肺組織損傷後に形成される修復巣であることを同定しRAMDと命名した。しかしながらRAMDが治癒に伴い早期に消失することも判明した。本研究では「肺CD8 TRM維持期間の延長」という命題に対し「RAMDの長期維持法の開発」及び「RAMD非依存的TRM分化・維持の開発」二つのアプローチを計った。 RAMDの長期維持に関して、ウイルス感染後8日目ごろからRAMD様のCD8T細胞集積部位が形成し始める。この頃のRAMDにおけるCD8T細胞以外の構成細胞はCD11c陽性樹状細胞よりF4/80陽性マクロファージがメインであり、時間経過と共に樹状細胞がメインとなった。しかしながら、この時期の樹状細胞を除去してもRAMD維持期間、及びCD8 TRM維持期間に影響は見られなかった。また、TRM維持に重要なパルミチン酸含有量の豊富なパーム油餌、リノール酸含有量の豊富な大豆油餌、αリノレン酸含有量の豊富な亜麻仁油餌などを給餌してRAMD維持期間、RAMD構成細胞の割合、肺CD8 TRMの代謝活性への影響を検討したが、共に大きな変化は現れなかった。これまでの結果より、RAMD維持機構の延長は困難であることが予測された。 申請者はアデノウイルスベクターの経鼻接種にてRAMD非依存的に肺CD8 TRMが長期維持されることを見出し、TRMインフレーションと命名している。本研究にてその機構を解明すべく、GFP発現アデノウイルスベクターを用いてマウス肺におけるウイルス抗原発現細胞を調べたところ、感染初期にて細気管支上皮細胞及び肺胞マクロファージにてGFP発現を認めた。これらの細胞が初期の抗原発現細胞であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は概ね実験計画の予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はRAMD内に確認されたマクロファージ(初期)及び樹状細胞(後期)の性状解析を進めると共に、アデノウイルスベクター経鼻接種にて誘導された肺TRMインフレーションの機構解明に取り組む。具体的には、アデノウイルスベクター免疫マウス肺におけるCD8T細胞増殖部位を指標に肺TRMインフレーション誘導部位を特定し、インフルエンザウイルス感染にて生じるRAMDと細胞の構成、機能などを比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
輸入品の納品に遅れがでて年度中の支払い手続きができなかった。本支払いは次年度に予定。
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