研究課題
肺粘膜に定着する滞在型メモリーCD8 T細胞(CD8 TRM)は様々な株のインフルエンザウイルスに対して交差感染防御効果を示す。研究代表者は肺におけるCD8 TRM分化・蓄積部位が肺組織損傷後に形成される修復巣であることを同定しRAMDと命名した。しかしながらRAMDが治癒に伴い早期に消失することでCD8 TRMによる防御効果も失われてしまうことも判明した。本研究では「肺CD8 TRM維持期間の延長」という命題に対し「RAMDの長期維持法の開発」及び「RAMD非依存的TRM分化・維持の開発」二つのアプローチを計ったが、本年度は「RAMD非依存的TRM分化・維持の開発」に焦点を絞った。我々はアデノウイルスベクターの経鼻接種にてRAMD非依存的に肺CD8 TRMが長期維持されることを見出し、TRMインフレーションと命名している。昨年度の研究にて、感染初期では細気管支上皮細胞及び肺胞マクロファージが初期の抗原発現細胞であることが判明したが、長期的な抗原発現は確認できなかった。そこで、本年度の研究にて肺TRMインフレーションの誘導部位を特定すべく免疫マウスの肺を組織学的に調べたところ、免疫後42日目においても広範囲にわたり細気管支周囲に細胞浸潤がみられ、異所性リンパ節様構造(iBALT)の形成も確認された。両部位にて増殖マーカーKi-67発現CD8T細胞が確認されたが、その頻度は細気管支周囲細胞浸潤巣にて高かったことより、細気管支周囲細胞浸潤巣が主要な肺CD8 TRMインフレーション誘導部位であると示唆された。また、この部位に存在するKi-67発現CD8T細胞の多くがCD11c陽性樹状細胞、もしくはF4/80陽性肺間質マクロファージと近接していたことより、これらの細胞集団が局所抗原刺激を供給し、メモリーCD8T細胞の増殖(インフレーション)を誘導しているものと示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究は概ね実験計画の予定通りに進んでいる。
令和4年度はアデノウイルスベクター経鼻接種にて誘導されるインフレーションを起こした肺CD8 TRMと、通常のインフルエンザウイルス感染により誘導された肺CD8 TRMをシングルセルRNAシーケンスにて比較することで、インフレーションの誘導に必至なシグナルを同定し、ワクチン開発に応用する。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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