研究課題
申請者は、接着斑構成因子FAP1ががんの悪性化に関与することを明らかにしてきた。本研究課題では、FAP1の機能と発現制御機構を明らかにすることにより、がんの新たな悪性化機構を解明すること、FAP1を標的とした抗がん剤候補化合物を探索すること、が目的である。FAP1は、既に知られていた接着斑因子FRNKと同一であった。本研究において、FRNKがDNA損傷ストレスにより強く発現誘導されること、FRNKを発現するin vivoのがん組織では、DNA損傷ストレスマーカーも発現していること、を明らかにした。また、Frnk遺伝子の発現は、転写因子NRF2に依存的であった。NRF2の阻害剤であるML385によって、FRNKの発現が阻害されたため、この化合物を抗がん剤候補の一つとして注目している。FRNKは、その発現により類似タンパク質のFAKと入れ替わり、接着斑を安定化して、細胞-基質間接着を増強することを見出した。また、がんの皮下移植実験により、皮下でのがんの生着、がん細胞塊の成長にFRNKが必要であることを明らかにした。in vitroの腫瘍塊形成実験においても、FRNK欠損株は、一旦形成された腫瘍塊が維持されず、分散していく様子が観察された。さらに、ヒトのがん検体では、原発巣組織に比べて、転移組織で高頻度にFRNKの発現が検出された。以上の結果から、DNA損傷ストレスを受けた生体中のがん細胞が、転写因子NRF2の作用により、FRNKを発現して接着を増強することにより、がんの転移、生着、腫瘍塊の成長を促進していると予想している。当該年度は、ヒト大腸がん株におけるFRNKの強制発現により、細胞の浸潤能が上がることをin vitroのアッセイにより見出した。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (4件)
Cell Death & Disease
巻: 14 ページ: -
10.1038/s41419-023-05774-4
https://www.tmd.ac.jp/press-release/20230411-1/
https://www.eurekalert.org/news-releases/987467
https://www.facebook.com/tmdu.public/posts/pfbid029LAj7bTjDyysp59LRqBaroK1L311N62DvAorx5PUxQMry1WJsFEKm9WLE7pN4bnMl
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