膠芽腫(グリオブラストーマ)は治療抵抗性の予後不良悪性疾患であり、未だ治癒に至る有効な治療法は開発されていない。グリオブラストーマは遺伝子発現プロファイルにより性質の異なるいくつかのサブタイプに分類されている。しかし、様々なストレスが刺激となり腫瘍内においてサブタイプ間での移行、いわゆる細胞系譜転換と、それに伴う細胞形質変化を生じることが知られている。特に、proneuralサブタイプの腫瘍が、再発時に治療抵抗性のmesenchymalサブタイプの腫瘍に変わるproneural-mesenchymal transitionが問題になっている。この細胞系譜転換とmesenchymalサブタイプの治療抵抗性の機構を明らかにするために、グリオブラストーマのmesenchymalサブタイプと治療抵抗性のマーカーであるCD44を利用し、解析した結果、低酸素状態やOLIG2の強制発現により、CD44の発現と治療抵抗性が抑制されることを見出した。また、CD44の高発現細胞集団と低発現細胞集団のRNA-seqの結果をもとに、リソソームが治療抵抗性に関与していることを見出し、リソソームの阻害剤にて処理することによって、CD44高発現細胞集団の治療抵抗性が抑制されることを明らかにした。さらに、リソソーム膜の脆弱性を誘導する処置を行うことによって、グリオブラストーマの主要治療法である化学療法剤テモゾロミドや電離放射線に対する感受性を上げることができることを明らかにした。
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