研究課題/領域番号 |
20K07575
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
西田 満 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (30379359)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 集団浸潤 |
研究実績の概要 |
各種ヒト大腸癌細胞株を用いて、集団的癌細胞浸潤におけるゴルジ体微小管の構築制御機構について検討することとした。まず、ゴルジ体微小管の形成制御に関わることが示唆されているIFT20とその発現制御に関わるRor2が、用いた大腸癌細胞株に発現しているのかどうかWestern blot法によって解析した。その結果、HCT116細胞とSW480細胞ではRor2の発現がほぼ同じレベルで認められたが、DLD1細胞ではRor2の発現は検出されなかった。一方、IFT20の発現はこれら全ての細胞株で認められ、中でもDLD1細胞では他に比べて高いレベルの発現が確認された。次に、Ror2の発現が確認されたHCT116細胞とSW480細胞において、Ror2ノックダウンがIFT20の発現に与える影響を検討した。その結果、HCT116細胞ではRor2ノックダウンによってIFT20の顕著な発現低下が認められたが、SW480細胞ではIFT20の発現レベルに変化は認められなかった。したがって、Ror2によるIFT20の発現誘導は細胞種特異的な現象であると考えられた。次に、これらの大腸癌細胞株のマトリジェル内における集団的浸潤能を解析した。その結果、HCT116細胞ではRor2ノックダウンにより集団的浸潤能が低下したが、SW480細胞ではRor2 ノックダウンによる集団的浸潤能への影響は認められなかった。一方、HCT116細胞とSW480細胞ともにIFT20 ノックダウンによって集団的浸潤能が顕著に低下した。さらに、Ror2の発現が検出されないDLD1細胞においても、IFT20ノックダウンによって集団的浸潤能が顕著に低下した。これらの結果から、IFT20は、Ror2の発現の有無に関わらず、大腸癌細胞の集団的浸潤を促進する役割を担っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍のため研究代表者と研究協力者が当初の予定通りに研究を実施することが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得た大腸癌細胞株に関するデータを踏まえて、DLD細胞を主に用いて集団的浸潤過程での、リーダー細胞とフォロワー細胞におけるゴルジ体由来および中心体由来微小管の動態について検討するため、微小管重合阻害剤処理や冷却処理を用いた微小管の脱重合および再重合実験とチロシン化チューブリン抗体を用いた免疫蛍光染色およびチューブリン-GFP等のライブイメージング解析を行う。また、リーダー細胞とフォロワー細胞が入れ替わる際のゴルジ体由来および中心体由来微小管の動態についても同様に検討する。これらの解析結果を踏まえ、リーダー細胞とフォロワー細胞での微小管動態におけるIFT20 ノックダウンの影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度はコロナ禍のため当初の予定通りに研究を実施することが出来なかったため次年度使用額が生じた。令和2年度に実施出来なかった研究を、令和3年度の計画と合わせて実施する予定のため、当該助成金は令和3年度分の助成金と合わせて使用する。
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