研究課題
これまでに、IFT20がゴルジ体の浸潤側への再配置を制御していることやリーダー細胞における安定化微小管の形成に関与していることを見出したが、それらの研究を遂行する過程で、IFT20のノックダウンによってゴルジ体におけるc-Srcのリン酸化レベルが顕著に減弱することを見出した。ゴルジ体におけるc-Srcの活性化はタンパク質の順行性輸送を促進することが知られている。そこでリーダー細胞においてIFT20がc-Srcを介してタンパク質輸送を制御している可能性について検討することとした。IFT20がMT1-MMPのゴルジ体内輸送を促進することを以前報告しているため、研究アプローチとしてMT1-MMPの輸送に焦点を当てた。まず、リーダー細胞におけるMT1-MMPのゴルジ輸送効率を定量解析するため、MT1-MMPを温度感受性VSVG(水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質)変異体との融合タンパク質としてDLD1細胞に発現させ、培養温度を変化させることによってMT1-MMPの小胞体→シスゴルジ→トランスゴルジネットワーク(TGN)→細胞膜の各輸送効率を解析した。これらの結果、IFT20の発現抑制によってVSVG-MT1-MMPの小胞体から細胞膜への輸送効率が低下したが、c-Src阻害剤処理や恒常的活性型変異体であるv-Srcを過剰発現処理を行った細胞では、ゴルジ体の形態が異常となったため、VSVG-MT1-MMPの輸送効率を正確に評価することは難しいと判断した。したがって、IFT20はc-Srcのゴルジ体におけるリン酸化を促進するが、その意義の解明にはさらなる解析が必要である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 299 ページ: 105248~105248
10.1016/j.jbc.2023.105248