研究実績の概要 |
これまでに日本人腎芽腫150症例の原因遺伝子・染色体構造異常の解析において、11番染色体短腕(11p)の部分的または短腕レベルの片親性ダイソミーが認められるにもかかわらずWT1遺伝子変異がない症例が多数認められることから、WT1遺伝子が位置する11pに腎芽腫の新規原因遺伝子がある可能性を見出していた。我々が開発したカスタムCGH + SNP arrayにて腎芽腫8症例にて解析したところ、3症例で11番染色体のWT1遺伝子より少しテロメア側に限局した11番染色体異常を同定した。3症例中1症例ではhomoWT1遺伝子欠失が生じていたが、この欠失とは独立した微小ホモ欠失を11p14領域に同定した。共通微小染色体異常領域に腎芽腫の新規がん抑制遺伝子があると考えた。この領域には3遺伝子(X1, X2, X3)と5ノンコーディングRNA(NR1-5)がコードされていた。NR3-5については正常腎で遺伝子発現を認めなかったことから新規原因遺伝子候補から除外した。 11pにLOHが認められた腎芽腫32症例にてX1, X2, X3についてダイレクトシークエンス法にて変異解析を実施したが変異は認められなかった。X1, X2, X3については多くの腫瘍でmRNA発現消失または減少が認められた。
|
今後の研究の推進方策 |
腎芽腫検体におけるX1, X2, X3遺伝子mRNAの発現消失・減少のメカニズムを明らかにするため、DNAメチル化解析を実施する。また、腎芽腫細胞株にてX1, X2, X3遺伝子の発現を亢進させ、細胞増殖能が低下するかを解析する。
|