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2021 年度 実施状況報告書

NR2F1 antisense RNA1の乳がん再発に関与する分子機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K07580
研究機関国立研究開発法人国立がん研究センター

研究代表者

竹下 文隆  国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 部門長 (40466199)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードlong non coding RNA
研究実績の概要

2020年度までの結果からNR2F1 antisense RNA1(NR2F1-AS1)は、ルミナル型の乳がん細胞においてエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体によって発現が抑制的に制御されているlncRNAであることが推測された。そこで、NR2F1-AS1に対するsiRNAにより抑制実験をおこなったが、エストロゲン受容体やプロゲステロン受容体の発現量に顕著な変化は認められなかった。次にNR2F1-AS1の細胞内での局在を調べるために細胞内のRNAを細胞質と核の画分に分けて発現量を定量し、NR2F1-AS1のRNAは主に核内で検出された。複数種類の乳がん細胞で同様だったことから、NR2F1-AS1は主に細胞の核内に局在し、がんの進展において何らかの機能を果たしていると示唆された。さらにNR2F1-AS1発現ベクターを作製し、ルミナル型のT47D細胞を用いて高発現株を作製した。高発現株は細胞増殖の速度が遅くなり、乳がんのおける休眠状態(dormancy)に類似した表現型を示し、さらにがん幹細胞のマーカーとしても知られるSOX2やSOX9の発現量を定量的PCRにより解析したところ、それらが顕著に上昇していた。
さらにデータベースを用いた解析からエストロゲン受容体陽性の乳がんにおいてNR2F1-AS1を高発現する群の予後が不良であることが示された。これらの結果よりNR2F1-AS1はエストロゲン受容体やプロゲステロン受容体によってその発現が抑制され、発現が通常のルミナル型の乳がんにおいては発現が低いこと、さらに高発現させることで、がん幹細胞性を誘導することから薬剤耐性や転移能の獲得などの悪性度と関連しており、がん遺伝子として働くこと、さらに予後予測のバイオマーカーとして使用可能であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

NR2F1-AS1の過剰発現による休眠状態、幹細胞性への誘導し、変化するシグナル経路の類推については達成した。
しかし、microRNAとの競合についての検討や、ヒト乳がんモデルマウスにおけるNR2F1-AS1のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)によるの抑制実験については、新型コロナによる、プラスチック製品の納期遅延により実施できなかった。

今後の研究の推進方策

(1) microRNAとの競合についての検討。NR2F1-AS1と相同性の高いmicroRNAを検索する。microRNAの標的mRNAの翻訳阻害が解除され発現が上昇する可能性がある。
(2) ヒト乳がん細胞株の、NR2F1-AS1の高発現株をヌードマウスに同所移植して乳がんモデルマウスを作成する。NR2F1-AS1のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の投与によりNR2F1-AS1の抑制実験を行い、NR2F1-AS1のASO単独または抗がん剤との併用による治療効果を検討する。なお、化学修飾を施したASOは血中安定性が非常に高く、全身性投与により、移植したがん組織にデリバリーされる。
(3) 乳がんの組織におけるNR2F1-AS1発現細胞の割合、不均一性等について、乳がん患者の初発原発巣、再発後の転移巣の摘出腫瘍、あるいは生検検体の凍結薄切切片において、NR2F1-AS1検出用プローブを作成しin situハイブリダイゼーションを行う。この解析により、NR2F1-AS1を発現する細胞の組織における割合、不均一性と、抗がん剤抵抗性および再発などの予後との相関について検討する。また、乳がんの臨床サンプルの数をさらに増やし(目標総数200例)、NR2F1-AS1の発現と予後についての相関を検証する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響で、プラスチック消耗品の納品の目処が立たず、実施できなかった研究を次年度に実施する。

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公開日: 2022-12-28  

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