1. 一次線毛陽性細胞とがん幹細胞の関係の検討 前年度までの研究成果から、肺腺がん細胞に発現するKATNAL2(katanin catalytic subunit A1 like 2)は一次線毛の発現を介して抗腫瘍薬への耐性獲得に関与する可能性が示唆された。この結果を受けて本年度は、一次線毛陽性細胞とがん幹細胞は一致するのか検討をおこなった。肺がん幹細胞マーカーとして報告のある5つの分子に関して免疫染色で検討したところ、細胞株と臨床検体のいずれにおいても幹細胞マーカー陽性細胞と一次線毛陽性細胞の明確な一致は観察されなかった。また、一次線毛陽性細胞の細胞周期の検討から、G0期で静止しているとされるがん幹細胞とは異なるチェックポイントにおいて静止している可能性が示された。 2. 治療標的としてのKATNAL2の有効性の検討 前年度までの研究結果から、KATNAL2のノックアウトによる抗腫瘍薬への感受性増大が示唆された。KATNAL2は微小管切断酵素kataninの酵素活性サブユニットの構成タンパクであるKATNA1に類似するタンパクであり、同様のタンパクとしてKATNAL1も存在する。本年度の検討では、これらのタンパクの中でKATNAL2だけが一次線毛への局在を示した。これらのタンパクの酵素活性ドメインのアミノ酸配列は相同性が高く、薬剤標的とした場合にKATNAL2以外も阻害される可能性が高い。肺腺がん細胞においてKATNA1とKATNAL1を阻害した場合の表現型は次の研究課題の中で検討する必要がある。
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