研究課題/領域番号 |
20K07582
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川崎 芳英 東北大学, 大学病院, 助教 (80722256)
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研究分担者 |
伊藤 明宏 東北大学, 医学系研究科, 教授 (70344661)
三塚 浩二 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80568171)
嶋田 修一 東北大学, 大学病院, 助教 (80749218)
方山 博路 東北大学, 大学病院, 助教 (90466558)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腎細胞癌 / 癌代謝 / チロシンキナーゼ阻害薬 / メタボロミクス |
研究実績の概要 |
以下のごとく課題を4つ作成しており、すべての課題に取り組むことができており、一定の結果も得られている。すでに論文作成も行っているが、資金不足により、苦しんでいる状況である。癌代謝の観点から腎細胞癌のTKI耐性機序と耐性リスクを基礎実験および臨床検体を用いて解明し、進行性腎癌患者におけるTKIの治療効果を延長させる研究である。 1.癌代謝からみた腎癌細胞のTKI耐性機構の解明:TKI耐性細胞株を樹立する。TKIはVascular Endothelial Growth Factor阻害薬であり、血管内皮との関連が重要な薬剤である。よって、in vitroで樹立したTKI耐性株をヌードマウスに皮下接種し、in vivoを介した耐性細胞株も樹立する。そいて、耐性化に関与する代謝化合物を同定し、代謝に関わる代謝酵素の発現をqPCRおよびウエスタンブロットで解析、遺伝子との照合を行う。 2.臨床応用可能なTKI薬効判定マーカー確立:100例以上のTKI治療患者と60例の健常者の尿及び全血検体を凍結保存している。グローバルメタボロミクスに加え、同定した代謝化合物の標準物質を用意し、精密定量をおこなう。本研究で同定した複数のTKIの耐性に関わる代謝化合物について、単変量および多変量解析を用いてTKI薬効判定の尿中および毛中代謝物による予測式を構築する。 3.TKI耐性シグナルに関連する代謝化合物その代謝経路および代謝酵素の解明:同定したTKIの耐性化に関わる代謝化合物と、MET/AXLのリン酸化変化とこれに関わる代謝経路を解明する。 4.代謝酵素制御によるTKI耐性腎癌細胞のTKI感受性獲得機構の解析:グルタミンは腎細胞癌のTKI耐性化のキー代謝化合物のひとつと推測している。グルタミン代謝に関わるいくつかの酵素のknockdown (KO)による代謝の変化、TKI感受性の変化を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・TKI耐性腎癌細胞の確立 TKI含有培養液を用いて腎癌細胞株786-OおよびACHNを培養し、10uMのTKI含有培地下の細胞株を樹立している。TKIは現在の進行性腎治療の趨勢を考慮し、sunitinib、cabozantinibを用いた。また、細胞株も786-O、ACHNの他、Chaki-1を用いて、3つの細胞株において耐性細胞を樹立し、耐性に関連する代謝化合物の解析も進んでいる。 ・代謝酵素制御によるTKI耐性腎癌細胞のTKI感受性獲得機構の解析 代謝酵素のKnockdownによるTKI耐性腎癌細胞におけるメタボロミクスを行っている。そして、グルタミンは腎細胞癌のTKI耐性化のキー代謝化合物のひとつであることを明らかにした。グルタミン代謝に関わるいくつかの酵素のknockdown (KO)による代謝の変化、細胞活性の変化、MET/AXLのリン酸化に及ぼす影響など調査した。作成した耐性細胞株を用いて解析をおこなった。TKI耐性細胞をふたたび感受性細胞のような状態に導き、TKIによる治療効果の持続が期待できる結果がでており、論文作成中である。 以上のように、特に2つの課題において当初よりかなりの早いペースで進捗してきたが、ここにきて、資金不足により思うように薬剤や測定のための物品が購入できず、苦しんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1.癌代謝からみた腎癌細胞のTKI耐性機構の解明:in vitroで樹立したTKI耐性株をヌードマウスに皮下接種し、マウスにTKIを一定期間経口摂取にて増大する腫瘤からin vivoを介した耐性細胞株を樹立する予定である。樹立したTKI耐性細胞株と非耐性細胞株において、メタボロミクスによる耐性化に関与する代謝化合物を同定し、関わる代謝酵素の発現をqPCRおよびウエスタンブロットで解析する方針である。 2.臨床応用可能なTKI薬効判定マーカー確立:100例以上のTKI治療患者と60例の健常者の尿及び全血検体のメタボロミクスはほぼ、終了しており、同定した代謝化合物の標準物質を用意し、代謝化合物の定量評価をしている。同定した代謝化合物について、単変量および多変量解析を用いて腎癌の再発リスクにおける予測モデルを構築できたため、論文作成をおこなっており、近日、投稿予定となっている。また、TKI耐性に関する予測モデルも作成中であり、論文化にむけて結果をまとめる方針である。 3.および4.の課題も発展させていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に使いきれなかった、端数の残金です。少額ですので、次年度の資材の購入費に使用させていただきます。
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