研究課題/領域番号 |
20K07583
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
横山 智哉子 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (50608908)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 三次元細胞培養 / がん / モノクローナル抗体 / サイトケラチン / 解答系酵素 / アドヘレンスジャンクション |
研究実績の概要 |
本研究は,生体内の腫瘍を模したがん細胞株の三次元(3D)細胞培養法と,モノクローナル抗体作製法を駆使し,腫瘍形成メカニズムの解明に挑む。研究代表者はこれまでに,低吸着性培養皿により3D培養したがん細胞を抗原としたモノクローナル抗体ショットガンアプローチ法により,3D培養がん細胞において発現量の亢進する因子として,細胞骨格分子,代謝関連分子およびアドヘレンスジャンクション構成分子を見出した。本研究の目的は,「3D培養がん細胞において高発現する因子が3D構造形成にどのような役割を果たすのか?」を明らかにすることである。また,これらの解析が腫瘍の薬剤耐性およびがんの転移メカニズムの解明につながる可能性を示し,新たながん治療法の開発につなげたいと考えている。本年度は,これらの3D培養がん細胞に高発現する因子を同定した。また,腫瘍形成に関わるメカニズムの解明に関わる実験を実施した。 発現ベクターおよび市販抗体を用い,3D培養がん細胞において発現量の亢進する因子として,細胞骨格分子はcytokeratin 18 (CK18),代謝関連分子はglucose-6-phosphate isomerase (GPI),アドヘレンスジャンクション構成分子はIQ motif containing GTPase Activating Protein 1 (IQGAP1)であると決定した。また,CK18について,3D培養がん細胞において細胞死による断片化を明らかにした。この結果より,本研究で用いた3D培養がん細胞では,内部に細胞死を誘導する微小環境が形成されており,生体内の腫瘍と同様の特徴を有すると示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同定されたそれぞれの抗原分子は個々にユニークな機能を持っており,同じ解析の実験がおこなえず,本年度に予定していた抗原分子の細胞内局在の解析および共役因子の同定についての実験が完了していない。しかしながら,CK18の解析から3D培養がん細胞における細胞死に着目した成果が得られており,次年度に予定していた3D培養がん細胞における3D構造形成に関わる機序の一端を明らかにした。したがって,総合的におおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
同定されたそれぞれの抗原分子について,個々に3D構造形成に関わる機序解明の実験を進める。CK18については引き続き,3D培養がん細胞における細胞死実験を実施し,3D培養がん細胞塊においてどのように細胞死が誘導されるか,また細胞死の種類などを明らかにする。また,GPIでは3D培養がん細胞においてタンパク質発現量が亢進する理由が,低酸素もしくは低栄養環境に起因するかなどを調べる。最後に,IQGAP1は足場因子として多くの共役因子を持つと知られているため,共免疫沈降法などを確立し,3D構造形成に関わる因子を明らかにする。
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