研究実績の概要 |
本研究では、(A) LY6Dが空胞形成を誘導するシグナル伝達経路の解明、として、(i) LY6Dの機能領域の解析、(ii) 細胞外から細胞内へとシグナルを伝えるタンパク質の同定、(iii) LY6Dの下流で働くRasの機能解析、(iv) Rasの下流で働きアクチンの重合を促進する分子の同定、(v) オートファジーとの関連、について解析を行ってきた。 (A)(i)(iii)(v)については、原著論文(Nagano et al., J. Biol. Chem. 296, 1000049, 2021)として報告した。また、(A)(ii)の細胞外から細胞内へとシグナルを伝えるタンパク質の同定では、膜貫通型受容体タンパク質であるIntegrin β1がLY6Dによる空胞形成シグナルを細胞内へと伝達する機能を持つことを明らかにした(Nakagawa et al., FEBS Lett. 596, 2768-2780, 2022)。 本年度は、(A) LY6Dが空胞形成を誘導するシグナル伝達経路の解明、の中で、(i)LY6Dの機能領域の詳細な解析を行った。LY6Dは、分子間相互作用に必須であるLUドメインと、細胞膜外葉への繋留に重要なGPIアンカーの修飾部位を有する。これらドメインに変異を導入したところ、GPIアンカーが付加されず細胞外に分泌されるLY6Dは空胞形成能を保持し、細胞内にとどまる内在型のLY6Dでは空胞形成率が低下することが明らかとなった。さらに、野生型及び細胞外に分泌されるLY6Dを過剰発現させた細胞培養上清を他の細胞に添加すると空胞形成率が優位に上昇することから、LY6Dの空胞形成において、LY6D自身は細胞膜外葉に繋留されなくとも、細胞外からマクロピノサイトーシスを誘導する分子群に相互作用することで空胞形成能を持つことが示唆された。
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