研究課題
胃癌細胞と腫瘍微小環境とのクロストークや、抗がん剤投与によりheterogeneityを来すという仮定の下、まずは胃癌細胞株を用いて、免疫担当細胞であるNK細胞との共培養を行い、さらに分子標的薬によるトラスツズマブを曝露することにより、胃癌細胞のPD-L1の発現を確認した。共培養によりmedium中にIFN-γが増加し、PD-L1の発現が上昇し、免疫抑制を来している可能性を確認した。これらの現象が、腫瘍の時間的なheterogeneityの要因になっていることが推測される。また、癌細胞は殺細胞性抗癌剤、分子標的薬により完全に駆逐されず、一部は治療抵抗性を獲得し、細胞増殖を停止させて老化状態となる(治療誘発細胞老化: therapy-induced senescence)。老化した癌細胞は様々な因子を産生するsenescence-associated secretary phenotype (SASP)の特徴を呈する。このSASP因子が免疫抑制を誘導することにより癌の進展、転移を幇助することが知られている。現在、胃癌腹水由来のCancer Associated Fibroblast (CAF) においてSASP誘導因子を同定し、これらを添加しCAFをsenescenceに誘導した。SASPを呈したCAFは、腹膜播種マウスモデルで腹膜播種の進展に寄与するかを検討中である。
3: やや遅れている
細胞株を用いた実験や、標的を絞った解析はおおむね順調に進んでいるが、RNA sequencingを用いた網羅的な解析はやや遅れている。腹水サンプル解析の予備実験を重ねている状況であり、今後もサンプル回収に努めたい。
可及的に多くのサンプルを採取することで予備実験の進行を早めたうえで、網羅的解析へ進めたい。
理由:試薬、消耗品については、医局内保管のものを使用することができた。また、旅費については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により学会開催形式がハイブリッド開催へ変更となる事が多く出張が減った為、未使用額が生じた。使用計画:試薬、消耗品の購入及び研究データの管理、資料整理を行ってもらうための事務補佐員の雇用経費に充てたい。また、最新の研究情報を得るため、及び、研究成果発表のための学会出張旅費にも充てたいと考える。
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Br J Cancer
巻: Feb;124(3) ページ: 595-603