研究課題/領域番号 |
20K07594
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岩槻 政晃 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (50452777)
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研究分担者 |
吉田 直矢 熊本大学, 病院, 特任教授 (60467983)
原田 和人 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (70608869)
山下 晃平 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (00867202)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HLA-E / NK細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では胃癌において、新規免疫チェックポイント機構NKG2A/HLA-E経路に着目し、胃癌での発現調整機序を明らかにした。 まず、胃癌切除検体232例を抗HLA-E抗体とNK細胞を抗CD56抗体と抗CD3抗体を用いた2重免疫染色を行った。その結果、HLA-E陽性、NK low群が最も予後不良であった。 次いで胃癌細胞株を用いて、ヒト全血から分離したNK細胞との共培養を行い、腫瘍膜表面のHLA-Eと上清中のsoluble HLA-Eの経時的変化と、同時に上清中のIFN-γの濃度変化を確認した。また、健常者ならびに胃癌患者血清中におけるsoluble HLA-Eを測定した。NK細胞との共培養において腫瘍膜表面のHLA-E発現はpeak outが見られる一方、上清中のsoluble HLA-Eは上昇した。共培養上清中のIFN-γは経時的な上昇を認めた。胃癌細胞へのIFN-γ添加時も膜表面HLA-Eのpeak outと上清中のsoluble HLA-Eの上昇が見られた。胃癌患者の血清中soluble HLA-Eは健常者と比較し有意に高値であった。進行胃癌のsoluble HLA-Eが早期症例よりも有意に高値であった。また、正常上限をcut oofとした時、soluble HLA-E 高値群は低値群と比較し、予後不良の傾向があった。 以上より、胃癌臨床検体においてHLA-E陽性、NK low群が最も予後不良であった。胃癌細胞株では、NK細胞由来のIFN-γにて腫瘍膜表面HLA-Eがpeak outする一方、soluble HLA-Eが上昇した。soluble HLA-EによるNK細胞の活性低下を認め、免疫逃避に関与することが示唆された。さらに血清中soluble HLA-E値は胃癌の進行度と相関することから、prognostic biomarkerとなる可能性がある。
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