研究課題/領域番号 |
20K07597
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
松木 崇 北里大学, 医学部, 助教 (00525511)
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研究分担者 |
多田 雄一郎 国際医療福祉大学, 医学部, 准教授 (70292430)
長尾 俊孝 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (90276709)
平井 秀明 東京医科大学, 医学部, 助教 (00770744)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 唾液腺導管癌 / 癌免疫微小環境 / 腫瘍浸潤リンパ球 / ミスマッチ修復機構 / 高頻度マイクロサテライト不安定性 / ニボルマブ / ペムブロリズマブ / PDL-1 |
研究実績の概要 |
唾液腺導管癌の腫瘍組織内における免疫チェックポイント分子の発現、免疫細胞浸潤の解析を行うことにより、唾液腺導管癌の癌免疫微小環境の臨床病理学的意義を明らかにすること、唾液腺導管癌に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療の可能性を探ることが本研究の目的である。 まず、本邦で最初に唾液腺癌に対して投与可能となったICIであるニボルマブの唾液腺癌24例に対する有用性を後方視的に解析し、論文発表を行った。唾液腺導管癌に対するニボルマブの効果を解析した初めての論文である。ニボルマブの治療効果は、唾液腺癌全体では、奏効率4.2%、無増悪生存期間中央値1.6か月、全生存期間中央値10.7か月、唾液腺導管癌では、奏効率5.0%、無増悪生存期間中央値1.5か月、全生存期間中央値11.3か月と、ニボルマブの治療効果は限定的であった。本課題研究の解析項目であるMSI(マイクロサテライト不安定性)、PD-L1と予後との関連について探索的データ解析も行った。MSI-H(高頻度)の症例は認めなかったが、PD-L1陽性(1%以上)は9例(37.5%)に認められ、治療効果との有意な関連は認めなかった。唾液腺導管癌に対するニボルマブ療法は、有害事象は軽微であるが効果も限定的であった。 また本年度は、多施設共同研究施設で治療を行った唾液腺導管癌175例の標本、予後データを収集した。現在、これらの症例の検体を用いて、癌免疫微小環境の解析を進めている。免疫組織化学染色を用いた解析項目は、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果との関連が報告されているPD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、腫瘍浸潤リンパ球(TILs)に関する解析としてCD8、FOXP3、および、ミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)に関する解析としてMLH1、MSH2、PMS2、MSH6である。またMSIの解析も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
唾液腺導管癌症例に対する免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブの治療効果と安全性の後方視的解析研究を英文論文として発行できた(発行日:令和2年10月12日。scientific reports. 2020; 10(1): 16988. doi: 10.1038/s41598-020-73965-6.)。 同時に、唾液腺導管癌多施設共同研究参加施設にて治療を行った症例の臨床データ、検体の収集を行った。癌微小環境に関する各種免疫組織化学染色(免疫チェックポイント阻害薬治療効果と関連するPD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、腫瘍浸潤リンパ球(TILs)に関連するCD8、FOXP3、および、ミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)に関連するMLH1、MSH2、PMS2、MSH6)が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
上述した免疫組織化学染色のデータを完成させ、2021年度末までの間に、得られた結果と唾液腺導管癌症例の予後データ(無増悪生存期間、全生存期間)との関連を解析し、学会発表を行う。 さらに、本邦で唾液腺癌に対し二番目に投与可能となった免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブの唾液腺導管癌に対する治療効果と安全性に関して多施設共同で後方視解析を行う。 論文化にむけて唾液腺導管癌症例の過去に得られた各種臨床病理学的バイオマーカーと、本研究で得られた結果との相関関係も解析を行う。臨床病理学的因子は、(1)根治手術例におけるT、N分類、無病生存期間、全生存期間、(2)炎症・栄養血液学的指標項目(血清アルブミン値、血清CRP値、好中球数、リンパ球数、血小板数、modified Glasgow Prognostic Score [mGPS]、好中球リンパ球比、血小板リンパ球比)、(3)根治手術例における病理組織学的所見(核多形性、核分裂像、各グレード分類、組織学的グレード分類、多形腺腫成分、リンパ節転移節外浸潤)、(4)根治手術例における各種バイオマーカー(AR、ERβ、EGFR、HER2、HER3、MUC1、PLAG1、p53、CK5/6、Ki-67、PI3K、p-Akt、p-mTOR、PTEN、免疫組織化学的サブタイプ分類、TP53/ PIK3CA/ AKT1/ K-RAS/ N-RAS/ H-RAS/ BRAF 各遺伝子変異)、(5)アンドロゲン遮断療法、トラスツズマブ・ドセタキセル併用療法、カルボプラチン・ドセタキセル併用療法、および2020年度に論文化したニボルマブ投与例、さらに新たに頭頸部癌で保険承認されたペムブロリズマブ投与例、それぞれの奏効率、臨床的有用率、平均無増悪生存期間、平均全生存期間、を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究に必要な試薬の使用が想定していたより少なく済んだことで次年度使用額が生じた。研究自体は順調に進んでおり、来年度にも必要な試薬を購入する際に使用する計画である。
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