研究課題/領域番号 |
20K07607
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊地 英毅 北海道大学, 大学病院, 講師 (60463741)
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研究分担者 |
菊地 順子 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (40739637)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNA損傷修復 / 化学療法 / 非小細胞肺癌 |
研究実績の概要 |
2020年度に我々はNHEJ阻害薬A-196と併用効果のみられるDNA傷害性薬剤の探索を行い、H1299細胞に対してパクリタキセル(PTX)およびドセタキセル(DOC)がNHEJ阻害薬との相乗効果を示す一方、ペメトレキセドとは併用効果を示さないことを明らかにした。 今年度我々は、パクリタキセルとNHEJ阻害薬の併用療法をさまざまな肺癌細胞株を用いて検討した。非小細胞肺癌株としてH1299,A549,H1975,H520を用い、NHEJ阻害薬としてA-196およびJQ1を用いた.細胞死,細胞周期,細胞分裂,DSBの評価をMTT法,ウエスタンブロット法,フローサイトメトリー法,タイムラプス顕微鏡観察にて行った. その結果、H1299が他の細胞株に比べてPTXへの感受性が低いこと、PTXが多くの肺癌細胞株においてmitotic arrestを誘導するもののH1299ではその効果が小さいことが明らかとなった。そしてその原因として、H1299ではPTXによるmitotic arrestの時間は他の細胞株よりも短く,mitotic slippageが有意により多く起こることが関与している可能性が考えられた。A-196あるいはJQ1によるNHEJ阻害によりPTXの H1299に対する殺細胞効果は相乗的に増強され,有意にDSBの増強やアポトーシスの誘導をおこすことが確認された.H1299ではmitotic slippageによりPTXによるDSBが修復されないままG1期に移行し, NHEJ抑制によりアポトーシスが増加した可能性があり、Mitotic slippageが亢進している細胞ではNHEJ阻害薬とPTXの併用効果を認める可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたDMAPTを用いてNHEJに対する影響を検討したが、過去に報告されている程度にはNHEJを抑制しなかった。これは細胞株や実験環境の違いが原因として考えられた。そのため薬剤を変更し、ヒストンH4K20メチル化酵素SUV4-20H1/H2阻害剤であるA-196を用いて研究を継続することとした。当初NHEJの抑制による抗腫瘍効果はパクリタキセル、ビノレルビンといった殺細胞性抗癌剤はM-G1期の細胞のDNAを傷害するため、特にNHEJ抑制がその効果的だと考えた。しかし、予想に反して、NHEJ阻害はH1299細胞でパクリタキセルと相乗効果を認めるものの、その他の細胞では相乗効果はみられなかった。そのため計画を一部変更して、NHEJ阻害薬の効果を予測因子について検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
当初NHEJの抑制による抗腫瘍効果はパクリタキセル、ビノレルビンといった殺細胞性抗癌剤はM-G1期の細胞のDNAを傷害 するため、特にNHEJ抑制がその効果的だと考えた。しかし、予想に反して、NHEJ阻害はH1299細胞でパクリタキセルと相乗効果を認めるものの、その他の細胞では相乗効果はみられなかった。これにはmitotic slippageが関与しているのではないかと考えており、人為的にmitotic slippageを起こす薬剤との併用等で治療法の最適化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行のため、予定していた学会に参加できず、旅費がかからなかった。またCOVID-19流行のため研究室が使えなかった時期があった。次年度は学会発表も予定しており、COVID-19で研究室が閉鎖される可能性も低いと予想されるため、予定どおりに予算を使用する予定である。
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