研究課題/領域番号 |
20K07614
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
内田 千晴 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 准教授 (60223567)
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研究分担者 |
塩谷 文章 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (10627665)
丹伊田 浩行 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20336671)
北川 雅敏 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50294971)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 複製ストレス / ATR / がん抑制遺伝子 |
研究実績の概要 |
DNA複製障害による複製フォーク進行の遅延・停止(複製ストレス)に対し、細胞応答の初期ではATR経路が活性し、複製障害が解消されるまで細胞周期を停止さ せる。しかし長時間の障害は、DNA二本鎖切断(DSB)発生-ATM経路を発動し、不完全な複製DNAをもつ細胞を排除する。これら二つの経路の制御は染色体安定性に おいて極めて重要であるが、「ATR-ATM経路の切り替えの制御因子は何か、その機能の破綻は、がん化の要因である染色体不安定化にいかに結びつくか」は明ら かではない。 申請者らは、がん抑制遺伝子産物RBファミリーの一つであるp130RB2が、DNA複製阻害に対する初期応答(複製ストレス初期の応答)でのATR活性化に寄与することを見出した。令和4年度はp130RB2がATR活性化経路であるETAA1-RPA32に関与し、複製ストレスにおけるATR活性化を正に制御することを明らかにした。p130RB2とETAA1の相互作用は、免疫蛍光染色法およびPLA法による共局在画像解析や生化学的沈降実験によって証明した。 さらに、p130RB2の機能喪失により、複製ストレスにおけるATR活性化の抑制、複製ストレス解消後の細胞周期進行の異常、anaphase染色体の異常、細胞生存率の低下が生じることがわかった。p130RB2の機能喪失による活性化メカニズムの破綻が、複製ストレス解消後の細胞の染色体異常や増殖異常を誘発することが示唆された。がん抑制遺伝子産物RBファミリーは、既知の細胞周期G1-S進行阻害機能に加え、S期複製阻害において重要な役割をもつという新たな知見を得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、複製ストレス初期のATR活性化機構にフォーカスし、がん抑制遺伝子産物p130RB2がETAA1-RPA32経路を介してATR活性化において正に 関与することを明らかにした。令和4年度はp130RB2がATR活性化経路であるETAA1-RPA32に関与し、複製ストレスにおけるATR活性化を正に制御することを明らかにした。p130RB2とETAA1の相互作用は、免疫蛍光染色法およびPLA法による共局在画像解析や生化学的沈降実験によって証明した。 さらに、p130RB2の機能喪失により、複製ストレスにおけるATR活性化の抑制、複製ストレス解消後の細胞周期進行の異常、anaphase染色体の異常、細 胞生存率の低下が生じることがわかった。p130RB2の機能喪失による活性化メカニズムの破綻が、複製ストレス解消後の細胞の染色体異常や増殖異常を誘発することが示唆された。ここまでの知見をまとめ、国際誌へ論文投稿を行い、リバイス実験を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は令和4年度までに得られた知見から発展させ、並行して見出していた新たな実験結果に着目し、他のATR活性化因子やATM活性化因子とがん抑制遺伝子産物との相互作用・機能相関について検証を進める。細胞周期制御因子の既存のメカニズムとの差異、新規性についてさらに詳細な解析を進める。また、他のRBファミリーが新規の細胞内機能を有するかついても検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで報告されていない分子間相互作用および当初結果と異なる現象が観察されたため、当初計画した実験内容の変更を行った。新たに見出した相互作用について、免疫蛍光染色による局在観察や生化学的な免疫沈降実験などを進めた。これら実験計画の変更により使用額に変更が生じた。 令和5年度は、他のATR活性化因子とがん抑制遺伝子産物(他のRBファミリーを含む)との相互作用や、未報告の細胞機能に関する解析を進める。さらに当初計画していたATM活性化経路の解析も進める。
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