研究課題/領域番号 |
20K07621
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
山田 幸司 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (90570979)
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研究分担者 |
吉田 彩舟 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40772744)
立花 利公 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (80163476)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PKCδ / 分泌 / 肝がん / マーカー |
研究実績の概要 |
本研究は肝がんにおける細胞内タンパク質の分泌(型破り分泌)の機構を解析するものである。本研究期間内に我々は、肝がん患者で血中プロテインキナーゼCデルタ(PKCδ)値が健常者や慢性肝炎患者、肝硬変患者より高値になることを見出している(Yamada et al., Cnacer Research, 2021)。またこの時、生きた肝がん細胞からPKCδが構成的に分泌されていることを見出している。PKCδの分泌は広く肝がん細胞株で見られ、不活性型の細胞質浮遊型でのみ見られ、活性型PKCδは分泌されないことも突き止めている。実際に、PKCの活性化剤であるホルボールエステル(PMA)で肝がん細胞株を処理すると分泌は抑制される。また、通常の分泌阻害剤であるブレフェルディンA(BFA)で処理すると既存の肝がんマーカーであるAFPの分泌は抑制される一方で、PKCδの分泌には影響されない。つまり、細胞外PKCδはこれまでの肝がんマーカーとは独立した機構に由来した画期的なマーカーを提供するものと推測される。この成果は、肝がんの早期発見につながる研究として現在、診断マーカーの開発に繋がっている。さらに本研究により、細胞外に放出されたPKCδががん細胞のみならず周囲の間質細胞とも相互作用することを見出した。特に、がん細胞においてはグリピカン3(GPC3)と呼ばれるへパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用し、インスリン様増殖因子(IGF1R)を活性化させることで、ERK1/2やSTAT3のリン酸化を惹起し、細胞増殖を亢進させる。市販のPKCδ抗体を用いて、細胞株や皮下腫瘍に処理したところ、増殖や腫瘍形成を抑制することを見出した。この成果は細胞外のPKCδを標的とした抗体医薬品の開発につながるものであり、現在、シーズ開発を進めている。このように、PKCδ分泌は肝がんの診断及び治療の双方の標的にすることが可能であり、今後さらなる機序解明とその知見の蓄積により、実用化開発の基盤を形成するものと推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分泌メカニズムの解明に繋がり、現在論文作成に至っている。また、診断、治療薬ともに、産官学での開発に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
分泌の論文を受理させ、さらなる分泌機構の解明を目指すとともに、新規の学術領域の創出を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
社会的状況による実験試薬購入の遅延等による。
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