研究課題/領域番号 |
20K07623
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
中田 晋 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80590695)
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研究分担者 |
飯居 宏美 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (00597768)
藤田 貢 近畿大学, 医学部, 准教授 (40609997)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | GGCT / 代謝リプログラミング / ヘッジホッグ経路 / 低酸素応答シグナル |
研究実績の概要 |
安定的GGCT強制発現NIH-3T3細胞を樹立して、血清飢餓誘導性オートファジーを抑制し細胞増殖を促進する条件で、マイクロアレイ法による網羅的遺伝子発現解析(n=3)を進め、詳細なバイオインフォマティクス解析を行った。メタボローム解析で変動がみられることを確認した、好気的解糖系の亢進(ワールブルグ効果)、核酸代謝系、ミトコンドリア酸化的リン酸化代謝系を中心として、増殖促進に伴う代謝変動について解析を行った。その結果、GGCTがHif1aの発現を制御する全く新しい因子であることを発見した。さらに、GGCTは好気的解糖系を促進する因子であることをみいだし、ワールブルグ効果を惹起することを発見した(Cancer Gene Ther. 2021 Jan 5. doi: 10.1038/s41417-020-00287-0. PMID: 33402732)。さらに、本モデルにおける膠芽腫幹細胞に対する、ヘッジホッグ経路ついて解析を行った。その結果、ヘッジホッグ経路のエフェクター転写因子であるGli2の発現が、この膠芽腫幹細胞の腫瘍形成能に重要な役割を果たすことを発見した(Cancer Gene Ther. 2021 Jan 7. doi: 10.1038/s41417-020-00282-5. PMID: 33414520)。また、がん細胞において、ヘッジホッグ経路のリガンドである、DHH、IHH、SHHの発現が、GGCTの発現抑制により制御を受けること、さらに、ヘッジホッグ経路のターゲット遺伝子であるGli1の発現も変動を受けることを見いだしつつある。これらの結果は、GGCTが、Hif1aの発現の亢進と、それによるワールブルグ効果を惹起し、その結果、ヘッジホッグ経路の異常亢進に寄与している可能性を示唆しており、今後これらの実証をめざす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により、我々が独自に確立した安定的GGCT強制発現NIH-3T3細胞において、血清飢餓誘導性オートファジーを抑制し細胞増殖を促進する条件を用い、GGCTががんにおける重要な代謝リプログラミングである低酸素応答シグナルの全く新規の制御因子であることを、世界で初めて報告した(Cancer Gene Ther. 2021 Jan 5. doi: 10.1038/s41417-020-00287-0. PMID: 33402732)。さらに、Sleeping BeautyトランスポゾンシステムでヒトEGFRvIII、NRasG12V、shRNA-p53を新生仔脳室に注入し、脳室周囲の神経幹細胞に導入する技術を用い独自に樹立した膠芽腫幹細胞モデルにおいて、ヘッジホッグ経路のエフェクター転写因子であるGli2の発現が、これらの腫瘍形成能に重要な役割を果たすことを発見した(Cancer Gene Ther. 2021 Jan 7. doi: 10.1038/s41417-020-00282-5. PMID: 33414520)。これらの成果は、申請書に掲げた目標の一端を実現したものであると考えられる。さらに、この膠芽腫幹細胞におけるGGCTの機能解析を進めており、すでに、GGCTの阻害がヘッジホッグ経路のリガンドの発現に影響を及ぼすことを見いだしている。また、ヘッジホッグ経路のターゲット遺伝子群の発現に対する影響も解析中であり、Gli1をはじめとする因子を見いだしつつある。これらの結果は、GGCTが、Hif1aの発現の亢進と、それによるワールブルグ効果を惹起し、その結果、ヘッジホッグ経路の異常亢進に寄与している可能性を示唆しており、今後これらの実証をめざす。
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今後の研究の推進方策 |
Sleeping BeautyトランスポゾンシステムでヒトEGFRvIII、NRasG12V、shRNA-p53を新生仔脳室に注入し、脳室周囲の神経幹細胞に導入する技術を用いて独自に樹立した膠芽腫幹細胞モデルにおいて、ヘッジホッグ経路の異常活性化に果たすGGCT遺伝子産物の寄与について検証を行う。すなわち、この膠芽腫幹細胞モデルにおけるGGCT遺伝子の発現を人為的に抑制し、ヘッジホッグ経路の関連因子を中心とした網羅的遺伝子発現解析を推進する。現在までにタンパク質レベルでの変動を見いだしつつある、ヘッジホッグ経路のリガンドであるDHH、IHH、SHHの発現制御に関して詳細に解析を行い、確実な変動を確認した遺伝子に対し、強制発現系またはノックダウン系を用いた介入による機能解析を行う。さらに、我々が本研究で見いだした新規のGGCT下流代謝リプログラミング因子である好気的解糖系を惹起する低酸素応答シグナルの活性化が、ヘッジホッグ経路の制御に果たす役割について検証する。すなわち、GGCTによって促進性制御を受けるHif1aにヘッジホッグ経路が制御を受けるのかについて検証を行うための、細胞種選定を含めた条件検討を進める。上記が計画通りに進んだ場合には、申請書に基づき、in vivoにおける膠芽腫幹細胞の腫瘍形成能に対するGGCT遺伝子の寄与を検証するとともに、ヘッジホッグ経路の関与を病理組織学的な解析によって実証することにより、GGCT阻害療法の実現にむけた新規バイオマーカーの同定を目指す。さらに、ヘッジホッグ経路の阻害剤であるGant61を用い、薬理学的介入による治療戦略の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた差額は端数であり、研究計画の遂行に影響を及ぼさない範囲のものである。次年度は、in vivoにおける膠芽腫幹細胞の腫瘍形成能に対するGGCT遺伝子の寄与を検証し、さらに、ヘッジホッグ経路の関与を病理組織学的な解析を行うために、動物実験に必要な経費を使用していく方針である。また、in vitroにおいては、GGCT阻害によるヘッジホッグ経路の変動のメカニズムについて解明するために、引き続き、遺伝子発現解析や生化学的解析のための経費を使用していく方針である。
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