環境要因への曝露は発がんの関連要因もしくは原因であるが、その分子機構は不明な点が多い。当該研究者は、慢性炎症などの環境要因がエピゲノム異常を誘発すること、慢性炎症を除去することが発がんを抑制することを示してきた。本研究では、マウスES細胞と遺伝子改変マウスを用いて、環境要因への曝露に対するエピゲノム異常を可視化するシステムを構築、分子機構の解明、大腸発がんの予防法開発に応用することを目的とする。 昨年度までに、エピゲノム異常可視化マウスES細胞の作製のためにmCherry遺伝子の上流にテトラサイクリン応答エレメントとEF1αプロモーター、下流にT2Aを挟んでPuro耐性遺伝子を組み込んだベクターを作製した。また、検出系の有効性確認のためのCRISPR-dCas9-Dnmt3aステムによるゲノム領域特異的なメチル化の系も作製した。さらに、内在性のプロモーター下流にCRISPR-Cas9システムを用いて遺伝子を導入するシステムの構築も試みた。候補としてHoxA5プロモーターを考えていたが、炎症曝露によって、よりメチル化されやすい領域を用いることとした。 本年度は、大腸の慢性炎症モデルであるdextran sulfate投与マウスの大腸上皮細胞を用いて、ゲノム網羅的なDNAメチル化解析を行った。メチル化されているいくつかの遺伝子領域が得られたので、データベースからES細胞と大腸がんにおけるDNAメチル化情報を入手し、スクリーニングを行った。
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