研究課題
本研究は、がんのスフェロイド形成におけるFetuin-A(α-Hs-glycoprotein)およびその糖鎖の機能と、細胞外グルコース濃度変化に誘導されるFetuin-AのN型糖鎖構造変化のメカニズムの解明をめざしている。特にN型糖鎖構造として、MGAT3遺伝子にコードされる糖転移酵素GnT-IIIによって生合成されるバイセクト型糖鎖に着目し、研究を進めている。昨年度までに、Fetuin-AまたはMGAT3遺伝子ノックアウト細胞およびMGAT3遺伝子過剰発現細胞を解析することで、Fetuin-Aおよびバイセクト型糖鎖が、がんの悪性形質に寄与することを明らかにした。今年度は新たに、細胞外ウシ血清(FBS)によるFetuin-Aの発現誘導、および細胞外グルコースによるケモカインCCL2の発現誘導を明らかにした。これらの結果から、細胞外環境に影響を受けたグルコース代謝変化が、Fetuin-AやCCL2を介してがんの悪性形質を増強することが示唆された。また昨年度より引き続き、Fetuin-Aの新規受容体およびシグナル伝達経路の解明に取り組んでいる。
2: おおむね順調に進展している
本年度の実験より、細胞外グルコースによるFetuin-AやCCL2の発現制御が明らかになり、がんの悪性形質を増強する微小環境が理解されつつある。これら多角的な解析結果は、本研究課題の目標達成に必要となる。
細胞外グルコースによるFetuin-A、MGAT3およびCCL2遺伝子の発現誘導メカニズムを明らかにする。またFetuin-Aの受容体およびシグナル伝達経路を明らかにする。加えて、Fetuin-Aの糖鎖構造を、質量分析にて詳細に明らかにする。
新型コロナウイルスの影響で実験に使用する消耗品等の納品が大幅に遅延したため。次年度、納品され次第、計画通りに速やかに実験を遂行する予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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