本研究の目的は、肺癌においてITGA2とITGA5が治療標的となるか解明することである。 昨年度までに肺癌の臨床検体およびTCGAデータベースの肺癌症例を解析し、ITGA2、ITGA5は両者とも高発現群で術後再発を多く認めた。また、ITGA2では、肺癌細胞株であるH522細胞とH661細胞にITGA2を強制発現し、細胞面積の増加、細胞外基質リガンドへの接着能、遊走能の亢進を認め、ITGA2阻害薬であるE7820によりそれぞれ抑制され、ITGA2強制発現による肺癌細胞株の悪性度の亢進は確かにITGA2の作用によることを示した。このITGA2研究の結果は、Jpn J Clin Oncol 2023;53(1):63-73に論文発表した。 今年度はH522細胞にレンチウイルスベクターを用いてITGA5の強制発現細胞株を作成した。また、ITGA5の高発現株であるCALU-1とSK-MES-1細胞に対してsiRNAおよびITGA5とITGAVの阻害薬であるGLPG0187を用いた。その結果、ITGA5の強制発現により細胞面積、接着能、遊走能が亢進し、siRNAを用いたノックダウンにより回復した。また、ITGA5高発現細胞株に対してsiRNAやGLPG0187を作用させたところ、細胞面積、接着能、遊走能、増殖能が抑制された。上記ITGA5の結果については、第82回日本癌学会学術総会で発表し(Ka et al. Regulating Integrin-α5 Expression Exhibit Changes in Functional Capabilities in Non-small Cell Lung Cancer)、現在は論文投稿を準備中である。 まとめ:ITGA2、ITGA5ともに高発現する肺癌は予後不良であり、癌細胞の細胞面積、接着能、遊走能を亢進させることを明らかとした。
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