本研究の目的は、RNA修飾であるエピトランスクリプトームが免疫逃避機構を担う免疫チェックポイント分子に与える影響を明らかにすることで、がんの免疫逃避の制御機構を解明することである。 本年は、大腸がん細胞を用いて研究を実施した。5種類の細胞株を用いて、免疫チェックポイント分子であるPD-L1とRNA脱メチル化酵素であるFTOの発現を調べた。その結果、HCT-116細胞株は、PD-L1とFTOをともに高発現していた。FTOをRNA干渉法を用いてノックダウンするとPD-L1のmRNAおよびタンパク質レベルが低下した。FTOによるPD-L1の発現制御機構を明らかにするために、PD-L1発現を上昇させる主要な刺激因子であるIFN-γの存在下でFTOをノックダウンさせた. FTOの低下は、IFN-γシグナルに非依存的であった。RNA免疫沈降法により、HCT-116のPD-L1 mRNAがm6A修飾を受けており、またFTOがPD-L1 mRNAに結合していることが明らかになった.これらの結果より、FTOが大腸がん細胞においてPD-L1の発現を制御することが示された。 本研究により、大腸がん細胞においてRNA修飾が免疫チェックポイント分子であるPD-L1の発現制御に関係するという新たな知見が得られた。
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