研究実績の概要 |
静岡がんセンターにて実施しているがん患者を対象とした網羅的ながんゲノム解析研究(HOPEプロジェクト)にて集積されたがん遺伝子変異データをもとに腫瘍特異的なドライバー遺伝子変異由来のネオアンチゲンの解析および同定を進めてきた。2020年までに蓄積されたがん患者5,000症例由来の遺伝子解析データより同定されたドライバー変異[KRAS, PIK3CA, EGFR, TP53, BRAF(ミスセンス)]より出現頻度が高くHLAに結合活性の高い変異配列の同定を実施した。57個の頻度の高い変異配列より想定される1万種類以上のペプチド配列からHLA結合予測アルゴリズムによるスクリーニングにて218個のペプチド配列を選別した。57個のホットスポット配列のうち、TCGAデータベースとの比較により、HOPE独自の変異配列も確認された。その後、ゲノム編集技術にて作製したmono-allelic HLA-expressing cellを利用したMHC安定化試験を実施し、最終的に27個のドライバー変異由来のネオアンチゲンパネルの同定に成功している。今回作成したmono-allelic HLA-expressing cellは、EBウイルスで不死化したTISI細胞株をもとにTAP遺伝子やHLA-ABC各遺伝子のノックアウト株を作製し、その後各HLA-classI遺伝子を導入することにより、単一のHLAアリールを発現するものである。その点では非常に独自性の高い細胞株であり、その成果はすでに論文に投稿中である。特にin silico解析では、同定されなかったTP53の変異配列もMHC安定化試験にて同定されている。今後のネオアンチゲンペプチドの結合活性を評価しうる有用なツールとなると思われ、ネオアンチゲンを同定する作業の大幅な効率化が期待される。
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