研究課題
HER2受容体を有する乳がんでは、HER2受容体に対して特異的に結合し、薬効を発揮する分子標的薬(抗体医薬品)であるトラスツズマブが治療に用いられるが、治療効果は必ずしも一律ではない。そのため、トラスツズマブの投与前に非侵襲的に効果予測できれば、無効群における有害事象の低減、医療費抑制につながることが期待される。そこで本研究では、撮像装置として一体型PET/MR装置や乳房専用PET装置を、PET診断剤として半減期が比較的長いポジトロン核種ジルコニウム-89(89Zr)で標識した抗HER2抗体(89Zr-トラスツズマブ)を用い、乳がんが疑われ、生検にて組織学的に乳癌が確定した患者、あるいは乳がんの治療後に再発が疑われた患者を対象にPET診断を実施し、18F-FDGなどの薬剤、およびPET/CT装置を用いたPET撮像など、従来の手法と比較することにより、乳がんの原発巣・転移巣におけるHER2受容体の発現状態を非侵襲的に評価できる画像診断法の確立を目指す。令和4年度は、89Zr-トラスツズマブの原材料である89Zr(oxalate)4を院内サイクロトロンで製造するための固体ターゲットシステムおよび89Zr精製用多目的合成装置システムの構築を行うとともに、89Zr-トラスツズマブの製造法に関する検討を行い、放射化学的純度95%以上で製造可能であることを確認した。また、昨年度に引き続きPET/CT装置および一体型PET/MR装置について、89Zrのファントム測定による各装置のPET撮像条件の検討を行い、これらの装置を用いた89Zr-トラスツズマブPET撮像を行うための環境整備を行った。
すべて 2022
すべて 学会発表 (8件)