研究実績の概要 |
研究の開始に際し、「凍結保存卵巣内の残存癌細胞の評価を行う多施設後方視的観察研究」として岡山大学倫理委員会で承認を受けた(研1909-044)。岡山大学病院産婦人科において、卵巣組織凍結を受けた症例は8症例で、原疾患が急性白血病であったのは5症例であった。死亡例、追跡不能例など3例を除き、最終的に2症例を本研究の対象とした。 当初の予定では、診断時の白血病検体、口腔粘膜、凍結卵巣のFFPE切片をセットとして検討する予定であったが、いずれの症例でも診断時検体は残されておらず、スワブで採取した口腔粘膜と凍結時に作製されたFFPE標本をサンプルとした。 症例1は思春期に診断されたT-ALL, 症例2は30代前半に診断されたFLT3-ITD変異陽性AMLであった。対象患者の凍結卵巣検体及び口腔粘膜検体からそれぞれDNAを抽出し、whole exome sequencing (WES)とTruSightTM Oncology 500 (TSO500, Illumina)パネルを用いたtargeted sequencing (TS)を実施した。TSO500はAML及びMDSを含む各がん種について米国の主要ガイドラインのバイオマーカーに対応する523の遺伝子パネルである。同一患者の凍結卵巣検体と口腔粘膜検体にて同定された遺伝子変異を比較し、卵巣のみで同定された遺伝子変異に関して、Catalogue Of Somatic Mutations In Cancer (COSMIC, https://cancer.sanger.ac.uk/cosmic)を用いて、AML及びALLに関する既知の遺伝子変異と照合した。 今回検討した2症例においては、白血病細胞の混入を示唆する遺伝子変異は認めなかった。次世代シークエンスを用いてMRDを検討した2症例において、さらに詳細を検討するため空間プロファイラーを用いるGeoMxを予定している。
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