研究課題
内視鏡的に切除した新鮮な大腸多発性鋸歯状腺腫2例の腫瘍部および背景正常大腸粘膜から、細胞を抽出し、ホルマリン固定した上で、抗ヒストンH3リジン4トリメチル化(H3K4me3)抗体、ならびに抗H3K27me3抗体を用いてクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-seq)を行った。また対照群として大腸腺腫2例の腫瘍部および正常背景粘膜を対照として、同様にH3K4me3とH3K27me3のChIP-seqを行った。また腫瘍部のDNAメチル化をInfinium BeachChipにより解析した。これらのデータを統合して解析した結果、鋸歯状腺腫の腫瘍部におけるDNAメチル化と、背景粘膜のH3K27me3との間に高い相関を認めた。逆に腫瘍部のDNAメチル化と、背景粘膜のH3K4me3は逆相関を示した。この傾向はThe Cancer Genome Atlasデータベースに登録された大腸がんのDNAメチル化データからも確認された。その中から我々は、TXL2とGABRA4に着目した。これらの遺伝子はCIMP陽性腫瘍において高頻度にDNAメチル化し、かつCIMP陽性腫瘍の背景粘膜においてH3K27me3の上昇を示した。次に我々はエンハンサー領域のDNAメチル化を解析した。公的データベースに登録された大腸がん臨床検体のヒストンH3リジン27アセチル化(H3K27ac)のChIP-seqデータを指標にエンハンサー領域を同定し、多発性鋸歯状腺腫のDNAメチル化データと統合した結果、FGF19遺伝子に存在するエンハンサー領域候補においてDNAメチル化の上昇を認めた。この領域のメチル化はBRAF変異陽性、MSI陽性の大腸がんにおいても高頻度に認めたことから、腫瘍リスクに関わる可能性が考えられた。
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J Gastroenterol Hepatol.
巻: 38 ページ: 301-310
10.1111/jgh.16055