研究課題/領域番号 |
20K07666
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
割田 友子 関西学院大学, 理工学部, 講師 (00753112)
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研究分担者 |
大谷 清 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30201974)
割田 克彦 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40452669)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スタチン / 薬剤感受性 / がん細胞 |
研究実績の概要 |
肺がん由来のNCI-H322M細胞株はスタチンに耐性を示し、同じ肺がん由来のHOP-92細胞株はスタチンに高感受性を示すことが先行研究により明らかとなっている。本研究では、スタチンに対し異なる感受性を示すこれらのがん細胞を用いて、ヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG-CoA)合成酵素(HMGCS)およびスタチンの標的であるHMG-CoA還元酵素(HMGCR)の発現量を解析し、がん細胞のスタチン感受性に関わる細胞特性の一端を明らかにすることを試みた。その結果、スタチン耐性がん細胞におけるHMGCSおよびHMGCRの発現は、スタチン感受性がん細胞に比べて有意に高く、HMGCS発現レベルは細胞内HMG-CoA量の測定結果と相関していた。また、スタチン耐性・感受性の両細胞株にアトルバスタチンを同量曝露したところ、HMGCRの発現は両細胞株ともに有意に増加し、細胞間の差異は確認できなかったが、一方、HMGCSの発現は、スタチン耐性がん細胞で増加し、感受性がん細胞で低下することが示された。 すなわち、がん細胞のスタチン感受性に関わる細胞特性として、(1) スタチン耐性がん細胞は感受性がん細胞に比べ、HMG-CoAの合成酵素および還元酵素の発現が元々高く保たれていること、(2) スタチン耐性がん細胞は、メバロン酸経路の律速因子であるHMGCRがスタチンにより阻害されても、HMGCSの発現をアップレギュレートすることで細胞内のHMG-CoA量を維持し、下流経路への影響を最小限に抑える機構がはたらくものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スタチン系薬剤の標的であるHMG-CoA還元酵素(HMGCR)およびその基質HMG-CoAを合成するHMG-CoA合成酵素(HMGCS)に関し、がん細胞のスタチン耐性との関連性について糸口がつかめ、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
メバロン酸経路の最終産物であるコレステロール量の測定およびコレステロール関連因子についてパスウェイ解析やGene Ontology解析を通して、スタチンによる変動を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に納品が間に合わなかったためである。消耗品に充てる。
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