研究課題/領域番号 |
20K07668
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
和氣 加容子 久留米大学, 付置研究所, 助教 (40649597)
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研究分担者 |
山田 亮 久留米大学, 付置研究所, 教授 (50158177)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / DAMPs |
研究実績の概要 |
細胞死により放出される腫瘍細胞ミトコンドリア由来のN-ホルミルペプチド(FP)はDAMPs(ダメージ関連分子パターン)として働き、炎症反応や自然免疫を誘導することが知られている。炎症反応は抗腫瘍免疫に抑制的に作用するが、自然免疫の誘導は腫瘍特異免疫応答を惹起すると考えられている。故に、腫瘍ミトコンドリアFPの抗腫瘍免疫における評価を検討し、制御することで腫瘍内微小環境を変化させ、抗腫瘍免疫を増強する仕組みをマウスモデルを使って確立することを本研究では目指している。 ミトコンドリアDNA遺伝子がタンパク質へと翻訳される際、mitochondrial methionyl-tRNA formyltransferase (Mtfm)により翻訳開始のメチオニンにホルミル化が起こる。ホルミル化タンパク質欠損株を樹立するため、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集によりMtfmtノックアウト腫瘍細胞株をマウスメラノーマ腫瘍細胞B16F10と大腸癌腫瘍細胞Colon-26 (CT26)で樹立した。Mtfmtノックアウトはタンパク質レベルで確認された。Mtfmtノックアウト株のin vitroでの増殖をCell Counting Kit-8を用いて検討したところ、野生株と同等の増殖を示した。しかし、B6またはBALB/cマウスに皮下移植したところ、4 Mtfmtノックアウト株のうち2-3ノックアウト株が早期において増殖が抑制される傾向が見られた。このことは腫瘍ミトコンドリア由来のFPが腫瘍免疫において抑制的に作用している可能性を示唆している。今後は、nCounterを用いてがん関連遺伝子の発現変化の網羅的解析やマウス皮下に形成された腫瘍組織を免疫染色により腫瘍組織への浸潤細胞の解析等を行い、腫瘍由来FPの腫瘍微小環境に及ぼす作用を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Mtfmtのノックアウトをタンパク質レベルで確認する段階で問題が生じ、それを解決するのに時間が掛かったため。現在、その問題は解決された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題において計画申請書を基に進めていく予定であり、研究計画の変更は現時点でない。研究実績で述べたように、腫瘍由来FPの腫瘍微小環境に及ぼす作用を明らかにするため、マウス皮下に形成された腫瘍組織についてnCounterを用いてがん関連遺伝子の発現変化の網羅的解析や免疫染色を行い、検討していく予定である。
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