研究課題/領域番号 |
20K07673
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
原口 健 千葉大学, 真菌医学研究センター, 特任准教授 (10549455)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DDS / LNP / アクティブターゲッティング |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに標的microRNAを特異的かつ高効率に阻害する修飾核酸分子「Super-S-TuD」を封入した、血中滞留性・腫瘍組織集積性に優れるLNPの処方を開発してきた。このLNPの表層に、標的とする細胞への結合能を有するリガンド分子を修飾することにより、標的細胞へ能動的に結合して取り込まれる「アクティブターゲッティング」能をLNPへ付与することを目指して本年度の研究を行った。 標的細胞への結合能を有するリガンド分子がその結合能を発揮するには、リガンド分子がLNPの表層に配位されることが重要である。そのためにはLNPの表層のPEG基の先端にリガンド分子を結合することが有効であるので、先端に官能基を有するPEG化脂質をLNPに搭載する方法を検討した。具体的には、リガンド分子を結合したPEG化脂質をLNPへと挿入するpost-insertion法と、PEG先端に反応基を有するPEG化脂質を加えてLNPを調製した後にリガンド分子を結合するpre-mixed法を検討した。この検討にリガンド分子としての研究報告の多いcRGD分子を用いた。リガンド分子修飾LNPをレポーター細胞に投与し、miRNA阻害活性を指標に核酸導入効率を評価したが、両手法とも効果が見られなかった。そのため代替のリガンド分子としてR8ペプチドを用いて両手法の比較検討を行った。その結果、pre-mixed法を用いたR8ペプチド修飾により顕著な核酸導入効率の上昇が見られた。この結合がリガンド分子とLNPの電荷的な結合ではなく、LNP表層のPEG分子先端に配した官能基に依存したものであるかを調べるために、蛍光標識R8ペプチドを用いた結合実験を行った。その結果、官能基付加PEG化脂質を含むLNPとのみ結合が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり本年度の研究において、Super-S-TuD封入LNP表層のPEG分子先端にリガンド分子を修飾する方法を確立することができた。LNP表層にリガンド分子を配位する技術は本研究の根幹をなす技術であるため、本年度の研究において確立できたことにより、次年度以降の研究を計画通りに進める基盤が整った。そのため本研究計画は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に構築したLNPのリガンド分子修飾法を用いて種々のリガンド分子を修飾し、それぞれレポーター細胞を用いて核酸導入効率を評価する。併せて細胞毒性の評価も行う。有効性を示したリガンド分子については修飾量の検討および組み合わせによる相乗効果の検討を行う。検討は複数種類の細胞株を用いて行い、汎用性を評価する。 高血中滞留性・高腫瘍組織集積性という良好な体内動態を示すLNPを基盤としているが、修飾したリガンド分子により体内動態が変化する可能性を検討する必要がある。そのため、有効性を示したリガンド分子修飾LNPについて、蛍光標識を行い、マウスへの投与実験を行い、その体内動態を観察する。以上により、腫瘍細胞への核酸導入効率に優れ、かつ高血中滞留性・高腫瘍組織集積性を示すリガンド分子修飾法を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予定通りに研究費を使用したが、少額の残金が発生した。 少額であるので次年度の研究計画を変更することなく組み込むことができる。
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