研究課題/領域番号 |
20K07675
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
松田 宙 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 消化器外科副部長 (00379207)
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研究分担者 |
植村 守 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (10528483)
平木 将之 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (80621036)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MUC1-C / 薬剤耐性大腸癌細胞株 |
研究実績の概要 |
抗EGFR抗体耐性大腸癌細胞株におけるMUC1発現についての解析: 大阪大学研究室で保有している抗EGFR抗体耐性大腸癌細胞株、またその他の関連する薬剤耐性大腸癌細胞株、大腸以外の癌腫である薬剤耐性乳癌細胞株の樹立を行い、抗MUC1抗体を用いて、薬剤耐性獲得の過程におけるMUC1分子の発現状況の確認を行う。 抗EGFR抗体薬治療後における腫瘍内不均一性の変化とMUC1発現についての解析 :対象症例となる抗EGFR抗体薬治療後に肝or肺切除を行った大腸癌転移症例を大阪国際がんセンター、大阪大学、または関連施設(関西ろうさい病院を含む)にお いて症例の集積を行い、可能であればfrozen(少なくともホルマリン固定した)腫瘍検体を保存していく。症例数は4~6例を検討しており、各症例において原発 巣、正常大腸粘膜を採取する。肝肺転移巣からは多領域分割シークエンスを行い、各腫瘍につき4~6か所程度サンプル採取後に解析を行う。1腫瘍内の耐性ク ローンと感受性クローンの関係性について検討する。腫瘍多領域分割シークエンスを行い、腫瘍内に異なる機序を持つ耐性クローンが複数存在するのか、ひとつ の耐性クローンだけが増殖しているのかを明らかにする。耐性クローンの定義はEGFR遺伝子経路上の遺伝子変異を獲得したものとする。また耐性クローンと感受 性クローンの腫瘍内での割合をVAF(Variants Allele Frequency)などから推定する。2耐性クローンの進化、MUC1-C発現と臨床因子との関連について検討する。 治療前の原発巣、治療後転移巣における経時的な耐性クローンの進化過程とMUC1の発現との相関について検討する。また、奏功率、無増悪生存期間、全生存期間 などの臨床因子との相関についても検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大腸癌治療で重要な抗癌剤オキサリプラチンと5FUに対する薬剤耐性大腸癌細胞株を数ヶ月にわたり樹立し、その耐性能を確認した。細胞株は、DLD1、SW480、HCT116の3種に対して、6種の薬剤耐性細胞株の樹立を行った。また、大阪大学研究室で保有していた抗EGFR抗体耐性大腸癌細胞株LIM1215の抗EGFR抗体耐性能を確認した。これまで、我々グループは、大腸以外の癌腫である乳癌細胞株BT-20とMDA-MB-468でABT737薬剤耐性株の樹立を行い、ABT737薬剤耐性株におけるMUC-1の高発現をタンパクレベルで確認している。今後、オキサリプラチンと5FUに対する薬剤耐性大腸癌細胞株6種と抗EGFR抗体耐性大腸癌細胞株LIM1215におけるMUC1分子の発現状況を、抗MUC1抗体を用いて確認する予定である。2021年度もコロナウイルスの影響で研究分担施設の研究室の制限、病院の手術制限などが影響し、遅れているのが現状である。 抗EGFR抗体薬治療後における腫瘍内不均一性の変化とMUC1発現についての解析を行うため、対象症例となる抗EGFR抗体薬治療後に肝or肺切除を行った大腸癌転移症例を大阪国際がんセンター、大阪大学、または関連施設(関西ろうさい病院を含む)において症例の集積中であるが、対象症例が現れず集積に難渋している。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの影響は依然続くと予想されるが、サンプル集積のために、当センターはもちろん、大阪大学、関西ろうさい病院と連携し、症例を取りこぼしがないよう適宜、連絡を密にする。 臨床サンプル集積に難渋しているため、今後は、大腸癌細胞株を用いたIn VitroとIn Vivoでの研究に重点を置いて進めていく予定である。オキサリプラチン、5FU、抗EGFR抗体に対する薬剤耐性大腸癌細胞株合計7種類の樹立に成功していることは大きな進歩であり、これらの細胞株を用いてMUC1分子の発現状況の確認を行う予定である。特に、抗EGFR耐性大腸癌細胞株LIM1215に対するMUC1-C Knock downによるPhenotypeの変化は詳細に検討する。さらに、抗EGFR抗体に対する薬剤耐性大腸癌細胞株LIM1215を免疫不全マウスの皮下に埋め込み皮下腫瘍モデルを構築し、MUC1阻害剤の治療効果の検証と、投与後の継時的な耐性クローンと感受性クローンの進化を追跡する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で計画通りに進まなかったのが大きな要因です。 今後もMUC1-抗体や薬剤耐性大腸癌細胞株を用いた研究を予定しているので、それらの試薬や備品などを購入予定です。
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