研究課題
近年、免疫チェックポイント阻害剤は癌免疫療法に目覚ましい飛躍をもたらしたが、非常に予後不良である膵癌においては、他の全身化学療法と同様に免疫チェックポイント阻害剤の有効性は示されていない。そこで我々は、膵癌において、免疫チェックポイントであるPD-L1経路やCTLA-4経路以外の癌免疫応答にブレーキをかけている機序があるのではないかと考え、新たな機序で免疫逃避機構を解除し、抗腫瘍効果を回復させる新規個別化癌免疫療法の開発を目指そうと考えた。【1.膵癌を含む消化管癌手術検体のシングルセルRNA-Seq解析】膵癌を含む、消化管癌の手術検体を用いて、10X GenomicsのChromiumにてシングルセルRNA-Seqを行い、臓器横断的に消化管癌における免疫逃避機構に主に焦点を当てて、腫瘍内に浸潤する免疫細胞の解析を行った。また、術前化学療法投与前後の免疫チェックポイント分子やT細胞の疲弊化マーカーの経時的変化を観察するため、当院消化管内科とも協力して生検検体のサンプル解析も行った。【2.免疫細胞を含めた微小環境を再現する3次元培養の確立】マウスのKPC細胞株、間質細胞および免疫細胞を用いて3次元モデルの作成を行い、免疫微小環境の解析を行った。今後は切除膵組織を用いて Patient derived organoid (PDO) mixed immune cellsモデルの作製を進めている。【3. 膵癌線維芽細胞に発現するPD-L1】膵癌組織中のPD-L1の発現を評価したところ、膵癌間質の線維芽細胞にもPD-L1の発現を認めた。また、手術検体のシングルセル解析においても癌関連線維芽細胞にPD-L1が発現していることを確認した。豊富な間質増生を病理学的特徴とする膵癌において、新たな免疫逃避機構の一つとなる可能性がある。
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Clinical and Translational Medicine
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Journal of Experimental & Clinical Cancer Research
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