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2021 年度 実施状況報告書

難治性多発性骨髄腫のCD26の発現誘導を制御するHDACアイソフォームの役割

研究課題

研究課題/領域番号 20K07682
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

西田 浩子  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80317130)

研究分担者 山田 健人  埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60230463)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード多発性骨髄腫 / CD26 / HDAC / アイソフォーム / 抗体 / エピジェネテイック制御
研究実績の概要

これまでの研究において、ヒト破骨細胞にはCD26が機能的に発現し、多発性骨髄腫では、破骨細胞との共存により、骨髄腫細胞のCD26発現が増強することを見出した。そして、ヒト化抗CD26モノクローナル抗体投与が、破骨細胞分化を抑制し、CD26陽性骨髄腫細胞に対し、抗腫瘍効果を呈する機序を明らかにした。しかしながら、骨髄腫患者骨髄では、骨髄腫細胞のCD26発現は均一ではなく、症例によりCD26陰性骨髄腫細胞が存在することや、抗CD26抗体投与によりCD26陽性骨髄腫細胞のCD26発現が低下することが明らかとなった。腫瘍抗原の発現低下は、腫瘍免疫回避機構の1つであり、抗体投与に伴うCD26陽性骨髄腫細胞の後天的なCD26発現低下も、抗体治療抵抗性骨髄腫クローンの原因になると考えられる。そして、一連の研究過程において、CD26陰性骨髄腫細胞に汎HDAC阻害剤投与を行うと、そのCD26発現が誘導され、一様に陽性となることを新たに見出した。汎HDAC阻害薬は、広範なHDAC阻害による副作用が問題となり、高齢者を中心に罹患する難治性骨髄腫の臨床で、使用することには限界がある。そこで、HDACアイソフォームの選択的阻害によるエピジェネテイック制御が、骨髄腫細胞のCD26発現を誘導する機序を明らかにし、難治性CD26陰性骨髄腫に対し抗体療法と併用し、相加・相乗的な効果を示し、副作用を軽減する新規治療法の開発が重要と考えた。本研究では、骨髄腫において、CD26の発現・機能を制御するHDACアイソフォームの役割を解明し、CD26陰性骨髄腫の抗CD26抗体治療抵抗性を克服し、難治性骨髄腫クローンを根絶する新規治療法開発の探索を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)昨年度までに、骨髄腫細胞株を用いて、各HDAC 阻害剤添加に伴うCD26発現推移について各種手法により解析を行い、骨髄腫細胞におけるCD26発現誘導が得られた。また、各HDAC阻害剤添加±ヒト化抗CD26抗体添加に伴う各細胞株に対する抗腫瘍効果およびその機序について確認した。次に、各細胞株の遺伝子発現プロファイルの解析を行い、各HDAC阻害が骨髄腫細胞のCD26発現誘導に関与する遺伝子群の抽出を試みた。本年度はこれまでに得られたデータを基盤に、各HDAC阻害により共通して、各骨髄腫細胞株で著明に発現が変化するいくつかの因子に着目し、各細胞株での発現をmRNA、および蛋白レベルで確認した。そして、骨髄腫細胞のCD26発現誘導において、これらの因子がCD26遺伝子のプロモーター領域に及ぼす作用を、ChIP法および定量PCRを用い解析を行ったところ、HDAC阻害の有無により、CD26プロモーター上で、因子Xの% recovery IP/INPUT値の有意差が得られることがわかり、プロモーター上の作用点Yに結合しすることを明らかにした。さらに、 各HDAC阻害に伴うCD26遺伝子のプロモーター領域のエピジェネテイック制御について、各種ヒストン蛋白、因子Xや関連する各因子のアセチル化に及ぼす効果について解析を行った。
2)ヒト化抗CD26抗体の免疫調節作用の検討として、骨髄微小環境を構成する免疫細胞のうち、昨年解析を行ったヒトN K細胞に続き、MDSCの作用について解析を行うこととした。今年度は、ヒト末梢血または骨髄細胞を骨髄腫細胞株と共培養を行ったのち、sortingによりMDSC分画を得たのち、i) 選択的HDACi、ii) 抗CD26抗体、iii) 選択的HDACi+抗CD26抗体の各投与が、1) MDSCの増殖・生存に及ぼす効果について解析を行った。

今後の研究の推進方策

1)HDAC 阻害剤が骨髄腫細胞のCD26発現を誘導する作用機序の検討:
a)CD26 promoter-chimeric luciferase reporter遺伝子を細胞株に導入し、細胞抽出液のルシフェラーゼ活性を測定し、各HDACi添加の有無によるCD26プロモーター活性の変化を解析する。更に、因子Xを細胞株のCD26プロモーター領域へ導入した時のルシフェラーゼ活性を測定する。b)因子Xに対するshRNAを細胞株に導入し、HDACi添加の有無によるCD26発現推移について各種方法を用い解析を行う。c)細胞株に選択的HDACi添加下、転写因子のアセチル化部位変異体を導入しルシフェラーゼ活性を測定し、各転写因子のアセチル化が、HDAC阻害による骨髄腫細胞のCD26発現誘導に及ぼす効果を解析する。d)CD26蛋白の安定性の解析として、骨髄腫細胞株に、各HDACiと蛋白合成阻害剤を添加し、細胞株のCD26の発現変化をFACS、WBを用い経時的に解析を行う。
2)ヒト化抗CD26抗体投与が骨髄腫の免疫抑制に及ぼす効果の検討:
骨髄腫細胞株と共培養を行った正常ヒト骨髄単核球より分離したTregを用い、CD26発現及び、抗CD26抗体投与が細胞の増殖に及ぼす効果を解析する。又、Tregと骨髄腫細胞株の共培養を行い、細胞株の増殖に及ぼす効果を解析し、HDAC阻害剤、CD26抗体投与の効果を調べる。MDSCについて、骨髄腫由来CD3+T細胞と共培養を行い、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+細胞、NK細胞の増殖に及ぼす作用を調べ、CD26抗体投与が及ぼす効果も解析する。又、CD26抗体が、骨髄腫由来CD8+T細胞の細胞障害分子の分泌やPD1の発現、 MDSC由来Arg-1, iNOS, COX2, ROSや免疫抑制、促進サイトカインの分泌やPDL1の発現に及ぼす効果を解析する。

次年度使用額が生じた理由

2021年度はCOVID-19 Pandemic遷延伴い、国際学会での研究成果発表を断念せざるを得ず、また国内学会も現地開催が急遽中止されWeb開催に変更された、もしくは、ハイブリッド開催が行われるも感染状況の悪化により現地に出張することを断念したなど、当初予定していた国内学会出張が全て中止となった。よって、そのための旅費費用の一部を当該年度に 物品費(主に試薬などの消耗品)に使用した。残高は、2022年度に繰越とし、研究課題の施行のための学会出張旅費、参加費など学会関連費用、論文投稿に必要な費用に充当する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Rapid progress in immunotherapies for multiple myeloma2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroko Nishida
    • 雑誌名

      Cancers

      巻: 13 ページ: 2712(1-31)

    • DOI

      10.3390/cancers13112712

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Up-regulation of CD26 on myeloma cells by HDAC inhbition enhances the efficacy of humanized antibody2021

    • 著者名/発表者名
      Nishida Hiroko, Mari Fujiwara, Chikao Morimoto, Michiie Sakamoto, Taketo Yamada
    • 学会等名
      The 83rd Japanese Society of Hematology, Annual Meeting

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公開日: 2022-12-28  

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