研究課題/領域番号 |
20K07686
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
桑原 一彦 藤田医科大学, 医学部, 助教 (10263469)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 転写共役型DNA傷害 |
研究実績の概要 |
2020年度は以下の3項目に関して研究を行った。 a) 乳腺特異的GANP欠損による乳腺上皮のゲノム不安定性にはBRCA2発現低下が関与するかの検証:BRCA2遺伝子をPCRクローニングして発現ベクターに組み込む過程を行ってきたが、タンパク翻訳領域は約10-kbと長いためまだ完成していない。ヒトBRCA2 cDNA全長をクローニングして発現ベクターを完成させ、ヒト乳癌細胞株MCF7への導入を行う。 b) GANPは標的分子BRCA2をどのように制御しているのかの検証:ヒト乳癌細胞株MCF7とMDA-MB-231を用いてCRISP-Casシステムを用いたHATドメイン欠失変異体の作成を行ったが、変異体の樹立には至っていない。他方、アクチノマイシンD処理によりBRCA2 mRNAの半減期を測定したが、GANPがBRCA2 mRNA安定性に関与している可能性は現時点では低いと判断した。 c) 乳癌組織検体においてGANPの発現とBRCA2の発現に相関がみられるのかの検証:藤田医科大学に提出していた倫理申請が承認され、藤田医科大学の非遺伝性散発性乳癌の臨床検体を用いて複数の抗BRCA2抗体による免疫染色を行ったが、複数の抗体を用いてもBRCA2の発現を効率よく検出できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は主として次年度以降のための準備の段階であり、研究計画に従って進めたものの、全ての部分において予想以上に時間がかかってしまった。BRCA2遺伝子のクローニングに関しては当初long PCRでトライしたがうまくいかず、結局短い断片をつなげるという方法に変更したため時間がかかってしまった。またCRISP-Casシステムを用いたHATドメイン欠失変異体の作成に関しては全く進展がなく、この点は手法の変更を含めて再考する必要がある。乳癌検体を用いた抗BRCA2抗体による免疫染色も条件検討をしたものの満足な結果が得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究計画に関しては、ほとんど進展がみられなかったのは、b) GANPは標的分子BRCA2をどのように制御しているのかの検証、の部分であった。ただし、アクチノマイシンD処理の実験によりGANPがBRCA2 mRNAの安定性に関わる可能性が低いことがわかったため、GANPのHATドメインの機能を明らかにする必要がある。再度CRISP-Casシステムを用いた変異体の作成を行うか、別の方法を考えるのか、慎重に判断する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染により、学会出張及び発表が行えず、また共同研究者との打ち合わせを対面で行うことができなかった。また必要な物品に関しても入荷に制限がかかり、思うように研究遂行ができなかった。
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