研究課題
2021年度は以下の項目に関して研究を行った。a) 乳腺特異的GANP欠損による乳腺上皮にゲノム不安定性にはBRCA2発現低下が関与するかの検証:昨年度から引き続きBRCA2遺伝子のクローニングを継続して行い、long PCRによりタンパク翻訳領域のクローニングを終了し、引き続き発現ベクターへの組み込むこともほぼ完成に近い。ヒト乳がん細胞下部MCF7での発現を確認したのちBRCA2-Tgマウス作製へと進む。b) GANPは標的分子BRCA2をどのように制御しているかの検証:ヒト乳癌細胞株を用いてHATドメイン欠失変異体の作製を試みたが、成功していない。そこでGANP遺伝子からHATドメインを欠失させた変異体を作製し、それを過剰発現する細胞株を樹立した。コントロール細胞と変異体を過剰発現する細胞との間で遺伝子発現解析を行い、候補遺伝子を同定したが、BRCA2は含まれていなかった。それ以外の候補分子に関して現在解析を進めている。c) 乳癌組織検体においてGANPの発現とBRCA2の発現に相関がみられるのかの検証:抗BRCA2抗体による免疫染色の条件が決定できたため、非遺伝性散発性乳癌の臨床検体を用いて解析中である。d) GANP発現抑制細胞においてPARP阻害剤の効果の検証:この研究を開始した時点に比べて改良型PARP阻害剤が複数入手可能になり、細胞株を用いた解析でPARP阻害剤の効果を検討した。当初予定していたclonogenic survival assayに比べて細胞のsphere形成により増殖を検討することが簡便であり、BRCA2の安定化に関与するDSS1をノックダウンすることで条件検討を行っている。
3: やや遅れている
2020年度の遅れの影響で今年度も研究計画は全てのパートにおいてやや遅れているが、BRCA2遺伝子のクローニング、GANP HATドメイン欠損変異体の作製、BRCA2の免疫染色など2021年度は実際の成果も出てきた。研究内容は最小限の変更にとどめて、計画を少し修正したことが効果的だったと考えている。
GANPがBRCA2をどのように制御しているかのメカニズムはこれまでの解析から明らかにできていないが、本研究課題の最も重要なポイントであるPARP阻害剤の効果に関してはかなり期待が持てると考えている。その理由として、DSS1を用いた予備実験で期待できる結果が出ている。このことはBRCA2の変異の有無によらずにBRCA2の機能障害を誘導することでPARP阻害剤の効果が出ることを意味しており、乳癌以外の他の癌腫においてもこの効果が期待できる。
新型コロナ感染拡大により、学会出張及び発表が行えず、また共同研究者との打ち合わせを対面で行うことができなかった。必要な物品の入荷もやや遅れがちであった。研究計画自体がやや遅れ気味であったため、前年度に購入した物品を使用することで2021年度の物品費の購入が少なかったことも理由としてあげられる。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Clinical Medicine
巻: 11 ページ: 251
10.3390/jcm11010251
Laboratory Investigation
巻: 101 ページ: 1048-1059
10.1038/s41374-021-00613-6