本研究では高機能性ヘルパーT細胞の大規模供給が可能な分化培養系の開発と、そのために必要なヘルパーT細胞分化の必要十分条件の同定を目的としている。筆者らはT細胞作製の有望なセルソースとして以前からiPS細胞の使用を提案してきた。本研究課題でもiPS細胞からのヘルパーT細胞作製に主に取り組んだ。 本研究開始時において、ヘルパーT細胞を作製できるin vitro培養系はArtificial thymic organoid (ATO)培養法だけであったが、マウスフィーダー細胞の使用とヘルパーT細胞作製効率の低さが臨床応用上の問題として指摘されていた。 そこで筆者らはこの培養系を参考にヘルパーT細胞分化系においてNotchシグナルとインテグリンシグナルの調節したところ、フィーダーフリー条件でもiPS細胞からCD4+CD8-CD5+の表面形質を示すヘルパーT細胞を誘導できる事が明らかとなった。この細胞は従来のCD8+iPS細胞由来T細胞に比べ、ヘルパーT細胞のエフェクター分子であるCD40Lを刺激依存的に顕著に多く発現した。さらにこの細胞は刺激後に細胞傷害活性も持つ事が分かり、キラー細胞としても同時に機能し得ることが示唆された。 近年、細胞傷害性ヘルパーT細胞が腫瘍長期寛解に寄与し得る事を示す報告が次々となされている。筆者らがiPS細胞から作製したヘルパーT細胞も同様の機能を備えている可能性がある。
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