研究課題
【腫瘍側からのアプローチ】免疫原性が低いことで知られているB16細胞株(マウスメラノーマ)の、マウスへの生着の評価と、ウイルスベクターを用いたCas9恒常発現B16細胞株の作製を行った。【T細胞側からのアプローチ】(1)繰り返し刺激によるT細胞分化促進を抑制する遺伝子の同定:CRISPR-guide RNA library導入Cas9発現ナイーブCD8+ T細胞をin vitroで繰り返し刺激後、分化に関連する細胞表面分子(分子Xとする)を指標とし、X発現T細胞とX非発現T細胞を対象にNGS解析を行った。その結果、X非発現T細胞と比較し、X発現T細胞でenrichしているguide RNAの標的遺伝子の中で、T細胞における機能が明らかになっていない遺伝子Yの同定に成功した。今後、遺伝子YがCD8+ T細胞の分化や機能に及ぼす影響について詳細に解析する。(2)腫瘍浸潤T細胞の疲弊を制御する遺伝子の同定:EG7(OVA発現EL4細胞)を生着させたマウスにCRISPR-guide RNA library導入Cas9発現OT-I細胞を移入後、腫瘍浸潤OT-I細胞中のTim-3陽性細胞とTim-3陰性細胞を対象にNGS解析を行い、Tim-3陽性T細胞と比較し、Tim-3陰性T細胞でenrichしているguide RNAの標的遺伝子を明らかにした。(3)免疫チェックポイント阻害剤に対する反応性を制御する遺伝子の同定:担癌マウスにanti-PD-1抗体およびPBSを投与し、PBS投与マウスと比較し、anti-PD-1抗体投与マウスでenrichしているguide RNAの標的遺伝子を明らかにした。(2)および(3)については、今後、これら標的遺伝子の中で、免疫チェックポイント阻害剤に対する反応性を制御する遺伝子を同定し、その遺伝子がT細胞に及ぼす影響について詳細に解析する。
2: おおむね順調に進展している
CRISPR-guide RNA libraryを用いた実験系を初め、すでに確立済みの実験系を用いたため、複数の実験を同時に行うことができた。
遺伝子YがナイーブCD8+ T細胞の分化や機能に与える影響を明らかにするとともに、腫瘍浸潤T細胞の疲弊を制御する候補遺伝子ならびに免疫チェックポイント阻害剤に対する反応性を制御する候補遺伝子についてもT細胞に及ぼす影響を明らかにする。また、B16細胞クローンを用いた、免疫原性を高める標的遺伝子の同定を進める。
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Cancer Immunol Immunother
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