研究実績の概要 |
血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬はいずれも高額な治療である。VEGF血中/胸水中濃度を測定し抗腫瘍効果の予測、血中バイオマーカーを測定し免疫チェックポイント阻害薬抗腫瘍効果の予測、薬物血中/髄液濃度を測定し薬物髄液移行率および脳転移抗腫瘍効果の予測、を行う ことにより治療を行わない方が良いと思われる症例を探索的に研究している。既治療非小細胞肺癌に対するラムシルマブとドセタキセル併用は1回に約43万円の 治療を3週毎に繰り返す高額な治療であるが効果の少ない場合がある。2021年度までに15例において検体採取が行われている。解析が行われた7例の結果はVEGF-D 中央値310(119-457)mg/ml, Tie2中央値188(129-327), 全症例のORR40%、PFS中央値(VEGF低値群/高値群) 85日/105.5日、PFS中央値(Tie2低値群/高値群) 85日 /105.5日。VEGF、Tie2共に高値群でPFSが良好な傾向にあった。肺腺癌に特異的に発現する抗原と肺扁平上皮癌に発現する抗原はがん細胞に特異的に発現し、それに対する宿主も免疫反応を起こす。これら抗原に対する患者血清中の抗体を有する肺癌患者は3分の2へ免疫チェッ クポイント阻害剤が奏効するのに対し、抗体を持たない患者では約2割の奏効にとどまるため抗体陰性の場合には患者の状態によっては治療を行わない方がよいと思われた。免疫チェックポイント阻害療法を行う患者15例に対して血中バイオマーカーを治療前に測定。陰性10例、陽性5例。陰性群/陽性群で病勢制御率50%/60%、全生存期間中央値168/598日で陰性例において効果が低かった。それぞれの治療において効果の劣る患者群を予測できそうな結果がでてきている。
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