研究課題/領域番号 |
20K07704
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
大澤 英之 自治医科大学, 医学部, 講師 (60458271)
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研究分担者 |
北山 丈二 自治医科大学, 医学部, 教授 (20251308)
佐田 尚宏 自治医科大学, 医学部, 教授 (20261977)
鯉沼 広治 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20382905)
宮戸 秀世 自治医科大学, 医学部, 講師 (90813163)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腹膜播種 / マイクロRNA / 核酸医薬 |
研究実績の概要 |
胃癌腹膜播種症例の腹腔内で発現が低下しているmiR-29を対象として、免疫能を含めた腹腔内微小環境へのmiR-29の作用を明らかにするため試験管内実験を行った。miR-29を胃癌細胞株および腹膜中皮細胞に導入し、増殖能・接着能・遊走能を評価した。miR-29は増殖能には影響しなかったが遊走能を低下させ、癌細胞の腹膜中皮細胞への接着能を低下させることが明らかになった。この現象の作用機序は網羅的遺伝子発現解析を用いて探索していく。また、末梢血から分離培養したマクロファージおよびリンパ球を用いてmiR-29が免疫能に与える影響も調べた。 さらに、マウスに腹膜播種を来す胃癌細胞株YTN16を用いた同種移植モデルでmiR-29の生体内での腹膜播種抑制効果を調べた。miR-29はアテロコラーゲン製剤と混合して投与し腹膜播種の形成状況を評価した。全体的な腹膜播種の形成状況は差がなかったが、miR-29投与群では大網上の腹膜播種結節が減少していた。 miRNAは生体内での安定性に欠けるため、適切なデリバリーシステムを開発する必要がある。我々は、miR-29を導入した間葉系幹細胞からエクソソームを分離し、miRNAのキャリアとして用いることにした。miR-29を導入した間葉系幹細胞からmiR-29高発現エクソソームを回収した。エクソソーム中の対象miRNAはデジタルPCR法によって内包されていることを確認し、エクソソームを腹膜中皮細胞に導入すると、miR-29を直接細胞に導入したときと同様に接着能と遊走能の低下が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃癌細胞株と腹膜中皮細胞を用いた実験で、増殖・接着・遊走能などの評価を順調に終え、マウス腹膜播種モデルへの投与実験を行うことができた。また、miRNAの生体内への導入法の検討を開始し、エクソソームをキャリアとして用いるためのmiRNA高発現間葉系幹細胞を初年度で作製することができた。
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今後の研究の推進方策 |
対象となるmiRNAが免疫系に与える影響が十分に評価出来ていないため、試験管内実験については免疫関連の実験を主体として行っていく。引き続きマウス腹膜播種モデルを用いた動物実験を継続し、腹膜播種の成立過程におけるmiR-29の役割と分子機序を明らかにするとともに、新規核酸医薬を用いた腹膜播種予防法の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症により緊急事態宣言に伴い、予定していた実験に必要な遺伝子関連実験の納品が遅れており、30万余りの余剰金が生じた。未使用額については、2021年度物品費として使用予定である。
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