研究課題/領域番号 |
20K07713
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岡村 純也 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (30447594)
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研究分担者 |
王 鋼 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (40274831)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 物体認識 / 神経細胞 / 多点記録電極 / 下側頭葉皮質 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究は,物体が観察角度に依らずに脳内で表現される神経メカニズムを明らかにし,機械学習を用いて三次元物体認識のための人工知能システムを構築することを目的とする.特徴が類似した4つの物体を作製し,それぞれ観察角度を0°から90°まで30°ずつ変え,合計16枚の画像を1つの物体セットとした.同じ観察角度で弁別経験した後,30-60°程度まで観察角度に依らずに物体を弁別できるようになることが行動実験から報告されている.ニホンザルに同じ観察角度で弁別経験させた後,下側頭葉皮質(inferotemporal cortex, IT)神経細胞の応答を記録した.同じ観察角度の物体画像への神経細胞の反応でサポートベクトルマシンの識別子をトレーニングし,異なる観察角度の画像への反応でテストした.下側頭葉皮質前半部(anterior IT)において記録した神経細胞集団において,識別子は高い弁別パフォーマンスを示し,観察角度間隔30°,60°,90°において真陽性率と偽陽性率の間に有意な差があった.一方,下側頭葉皮質後半部(posterior IT)において記録した神経細胞集団において同様の解析を行ったところ,観察角度間隔30°において真陽性率と偽陽性率の間に有意差の有る時間窓があったが,観察角度間隔60°,90°においては有意な差が無かった.この結果より,下側頭葉皮質前半部において90°までの観察角度許容性が表現されていることが明らかになった.同時に記録した神経細胞集団の応答を解析するため,複数の記録点から成る多点記録電極を用いた記録法の確立に取り組んでいる.行動実験から1頭のニホンザルのトレーニングを行い,8の記録点から成る多点記録電極での記録を試みたが,充分な精度のデータが得られていない.複数の記録点から成る多点記録電極を用いた記録法,解析法の確立に現在取り組んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに取得したデータを用いて解析を行っている.多点記録電極を用いた新規データの取得が困難であった.前年度にニホンザルの入荷が遅れたことが原因の一つであるが,多点記録電極を用いた記録法,解析法を研究室で確立させる必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
まずは多点記録電極を用いた神経細胞の応答の記録,解析方法を確立させる必要がある.5×5の記録点から成る多点記録電極を用いて,動物の皮質の神経細胞活動を記録し,同期的な応答を解析する.現在までのデータを対象とし,下側頭葉皮質前半部と後半部の違いに特に注目して機械学習を用いた解析を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
電気生理実験のデータ解析補助のアルバイトをまだ雇用していないこと,動物実験施設の改修のため使用が制限されていることが挙げられる.多点記録電極を用いた皮質の神経細胞応答の記録,解析のための実験動物の購入,動物実験施設使用料,実験用試薬の購入に使用する.
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