研究課題/領域番号 |
20K07714
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
大木 紫 杏林大学, 医学部, 教授 (40223755)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 身体所有感 / 経頭蓋磁気刺激 / ラバーハンド錯覚 / 固有感覚ドリフト |
研究実績の概要 |
杏林大学医学部倫理委員会の許可が得られ、介入法のうち反復経頭蓋磁気刺激法の実験を開始した。現在まで、左運動前野腹側部刺激の効果について、4名の右利きと1名の左利き被験者での記録を終えている。 この実験では、被験者の左手にラバーハンド錯覚を起こし、その後1Hzの反復経頭蓋磁気刺激を20分間加えた。刺激部位は、脳波計測でラバーハンド錯覚による活動変化が見られた電極位置(FC5)を用い、左運動前野腹側部に対応すると考えられた。刺激強度は、皮質表層の抑制性ニューロンを刺激するため、一次運動野の運動閾値以下の刺激を用いた。このため、まず左一次運動野刺激が右第一背側骨間筋に誘発筋電図を起こす安静時閾値を求め、その80%の強度から開始した。効果が見られない場合は系統的に強度を変化させた。刺激の前後で錯覚の強度を質問紙で測定し、更に固有感覚ドリフトを計測した。固有感覚ドリフトは、ラバーハンド錯覚が生じている時、自分の手の位置がラバーハンドの方に移動するように感じる現象である。今回は2種類の方法を用い、被験者は①閉眼し右手で左手の位置を指示し、②開眼状態で、実験者の手が左手の位置を指示した点を報告した。4人の右利き被験者では、反復刺激後に固有感覚ドリフト(特に①)が低下し、錯覚の強度も低下することが確認された。しかし、1名の左利き被験者では、この効果は観察されなかった。 今回の結果から、運動前野腹側部がラバーハンド錯覚と固有感覚ドリフトに関与することが直接証明できた。しかし、左利き被験者の結果から、利き手による側性化が存在することが示唆された。今後は、脳の左右差やその他の脳部位の関与について、検討していく予定である。以上の結果は、第46回日本神経科学大会(2023年8月)に発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画より1年延長したが、現在は順調に実験が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は被験者数を増やし、左運動前野腹側部の関与について確かめる。更に、右運動前野腹側部や、左右の手に対する影響を見る実験を行い、側性化について検討を行う。また、運動前野と同様ラバーハンド錯覚への関与が知られている、頭頂連合野の関与についても、同様の方法で確認していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
倫理委員会の許可がおりるのに時間がかかったため。また、コロナ禍で、被験者をリクルートするのが困難であったため。しかし、現在は以上の問題が解決し、研究を再開している。
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